48本目 ページ50
「率直に言おう、今日のお礼がしたい」
「要らねえ」
教える前は仕方がない、といった具合なのにその後はやたらさっぱりしている傾向にあるのはなぜなのか、と頭の片隅で疑問に思う。口に出さないのは、そうしたところで本人が答えてくれるタイプの質問ではないと感じたからだ。そもそも爆豪は怒っている時以外の口数は多くはないし、これでも十分相手をしてくれている方だと思う。だから私もあまり余計なことは言わないのだが、やはりどれだけ爆豪の中間テストが余裕でも、時間を使わせてしまった申し訳なさは消えない。
「じゃあ勉強会の延長戦だと思って付き合って」
攻め方を変えようと出した策がこれである。元よりお礼なんて自己満足に近いのだから、開き直ってしまった方が楽かもしれない。散々痴態を晒しているので、私は以前よりも大胆になっていた。しかし爆豪からの返答は無く、遂に帰り道に通りかかる最後のコンビニがある曲がり角に差し掛かった。忘れた頃に適当な理由を付けて何かしら渡そうか、などと思案していると、爆豪が吸い込まれるようにコンビニへ入っていった。
「何ぼさっとしとんだ」
はてなマークを頭上に浮かべる私に、爆豪はコーラ味のアイスキャンディーを押し付ける。商品と爆豪の顔を視線で往復していると「礼がしてえんじゃねェんかよ」とぼそっと聞こえた。ああ、彼は私に気を遣ってくれたのだと気付いた瞬間、ほくほくとした胸の感覚を覚えた。爆豪のアイスを受け取って自分の分を素早く選び、会計を済ませて外に出ていた爆豪に赤いビニール包装のアイスを手渡した。
「もっと高いのでも良かったのに」
「これが1番刺激が強え」
アイスに刺激とは？ と、パッケージに踊る文字を思い出した。確かに所々が尖ったフォントで口内刺激を謳っていた。なるほど、濃厚なアイスクリームよりかは爆豪のイメージに合うかもしれない、と少し笑いそうになった。
「お前よくそんなクソ甘ェの食えんな」
「ダッツは至高、いる？」
「要らねぇよ」
デジャヴを感じる反応を貰い、そりゃそうだよねと少し溶けたクリスピーサンドを頬張った。ウエハースの歯応えと香ばしさがキャラメルアイスを包んで至福である。他より高い値段には理由があるのだと食べる度に感心する。
色々言いながらもお礼に付き合ってくれたんだよなぁ、と爆豪を見ると、いつの間にかアイスを食べ終えて棒のみを咥えていた。良い点を取ったらまたお礼させてくれるかな、と視線を落とした。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
