45本目 ページ47
頭上から呼びかけられた気がした。こんな時間にわざわざ私を呼びに来るような人物は親友である悠香以外考えられず、更に思考力の殆どを数学に向けている私は脳死で応える。顔の動きはワンテンポ遅れて、見上げた時に私の目が捉えたのは親友ではなく、爆豪の姿だった。
爆豪がいる。その事実は受け入れられても、状況をまるで理解できない私は繰り返し「何で」と口にすることしかできなかった。そのあんまりな私の様子に爆豪さえも笑うくらいだ。
「えっと、何か用事があったり？」
「無ェわ」
正直、今は縁を気にしてる場合ではないので後にしたいのだが、私の個性である以上は「邪魔しないで」と言うわけにもいかない。それを遠回しに伝えたが、爆豪はどうやら私に用事があるわけではないらしい。いよいよ以て頭を抱えた。
正直に「数学のテスト勉強が修羅場なので放っておいてほしい」と伝えた方が良いだろう。恐らく馬鹿にされるだろうが、今はプライドより赤点を回避することを優先すべきなのである。学業は学生の本分なのだから。
「数学がヤバいので何かあるなら今度にしてほしいな〜なんて」
「てめェそこまで馬鹿なのかよ」
「数学だけだよ！」
私の必死の訴えは鼻で笑われてあしらわれた。これ以上話していてもタイムロスに他ならない。勉強モードに入った私はいくらか冷静なのか、相手にしないことを選んだ。用も無いのに絡みに来るような性格ではないはずだが、本当にただ私を見に来ただけなのだろう。何の為にかは知らないが、まず爆豪自体を理解しているわけではないので、何かしらあるのだろう。その何かしらは今の私にとって気にするようなことではないと、そう判断した。
「ねえ、見られてると落ち着かないんだけど」
「つまらねえ計算ミスが多いんだよアホ」
「っていうか爆豪は私を冷やかしてる場合なわけ？」
ヒーロー科だって中間テストはあるだろうし、ヒーロー科の方が忙しいから大変なのではないか。私の嫌味を込めた心配をまたもや一笑に付して爆豪は言った。
「中間程度の範囲で躓くわけねェだろが」
「クソ、勉強できるタイプの不良だったか……」
「んだとコラ」
いけない、と私はまた問題集に視線を移した。くだらない言い合いをしている場合ではないのだ。どうせ勉強できるなら教えてくれればいいのに、という溜め息を吐きかけ、そして飲み込んだ。俗に言う「ワンチャン」とやらが見えたのである。
「……時間あるなら数学教えてくれない？」
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
