44本目 ページ46
爆豪は悩んでいた。同級生の女子から来たメッセージにどう対処すべきかを。正確に言えば、そのまま放置したことによって頭から離れなくなっていた。とは言っても「才能マン」と称される彼はそれで授業が疎かになるわけもなく、職場体験があって慌ただしかったにも拘らず中間テストに怯えることは微塵も無かった。悲鳴を上げているA組の生徒はいたが、「下らねー」と気にもしなかった。
昼休み、いつものようにすれ違った結縁に話しかけるということはしなかったが、彼女の様子に違和感を覚えた。放課後、翌日の朝、昼、そしてまた放課後と、その違和感は積み重なっていって、いつの間にか苛立ちに変換されていた。今までは目が合うなりしていたのに、視線すら交わらずに足早に何かを考えこんだような顔つきで彼女は通り過ぎていく。
まさかまた何か妙なことをしているのだろうか、あれだけ釘を刺したではないか、と爆豪の苛立ちはピークに達し、抗議の為の着信を入れた。これは余計な連絡ではない、もしまた倒れられたら自分が困るからと内心誰かに言い訳をしながら。
――お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為、掛かりません。
無機質なアナウンスに数秒茫然として、怒りで片方の拳を握り締める。あのクソアマ、とスマートフォンに視線を落とせば、くっきりと赤い糸が視えた。傍から見れば悪役さながらの笑みが爆豪の顔を塗り潰す。大股で校内を歩き、2度目の縁の糸辿りの末に行き着いたのは図書室だった。
訝し気に眉をひそめながらも歩みを止めない爆豪は、遂に行き止まりとなるある一角に目的の人物を見つけた。何やら数学の問題集を広げてうんうんと唸っている。独り言を口にする姿は気に食わない幼馴染を彷彿とさせて、爆豪は1つ舌打ちを零した。
更に近付いても結縁が爆豪に気付く素振りは無い。どうやら数学の中間テストの範囲らしき公式に苦戦しているようだ。図書室だから自然と声は控えめに、それでも無視はできないような声色で爆豪は呼び掛ける。
すると彼女は、余程集中しているのか、爆豪を自身の友人である女生徒と思い込んで顔を上げ、絶句していた。その間抜けな顔を見た瞬間に爆豪の中の苛立ちやら不快感はすっかり雲散し、腹を擽る様な愉快さすら覚えた。
「え、なん、何で？」
鳩が豆鉄砲を食ったように同じような反応を繰り返す彼女に、零れかけた笑みを思わず飲み込んだ。失笑だったに違いないと爆豪は思った。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
