39本目 ページ41
「保健室の時みたいにならないように！」
彼女にしては大きな声で、恐らく羞恥で潤っているであろう目で見据えて言うものだから、爆豪は虚を衝かれたような思いだった。前の保健室での出来事を引きずっていると、こちらに迷惑をかけないよう無理をしたと口にする彼女の顔は先程と打って変わって鮮やかに染まっていた。
そうして初めて爆豪は気付いてしまった。自分があの一件を迷惑だとは微塵も思っていなかったことに。そしてそれに気付いた瞬間彼の思考は停止した。混乱と言った方が正しいのかもしれない。普段ならば関わる必要もない人物と話すことすら煩わしいのだ。その上仕方のない状況とはいえ、そんな人物を庇って数分だが同衾した。
その事実を爆豪は今彼女が言うように「迷惑」だと感じたことは１度も無かった。そう気付いたら自分でも自分に大きな違和感を覚えずにはいられないのに、今の今までそんなことを考えることすら無かったのだ。何かがおかしいと彼は珍しく自分の頭を疑った。
「……んで結局迷惑かけてんだから世話ねぇな」
「そこを突かれると本当に何も言えないなぁ」
眉を八の字にして笑う結縁のゆるりとした笑顔に胸の奥が鳴る。率直に言うなれば、爆豪は結縁にもう今回の様な無茶をしてほしくないと思っていた。その思いを自覚して、爆豪は自分が結縁を知らず知らずのうちに心配していたことに気付き自身への驚きを隠せなかった。
自分が、目の前の女子を？ そんな懐疑的な心を知る由も無く、彼女が不思議そうな顔で見ているものだから、習慣化された罵倒交じりの言葉で突き放したのである。今更ではあるが、女子に「きめぇ顔」は言い過ぎたかもしれない。そんな反省をしている自分のらしくなさと、勝手に口をつく罵倒に嫌気が差してさっさと歩いた。
明らかに自分の中の調子が狂っているのは認めざるを得ない事実だ。そしてその原因が小指に結ばれた赤い糸の様な縁であることも、その主に対しての言いようがない感情であることも。
明日から、また彼女と事あるごとにすれ違う日々を過ごすのだろうか。もしまた今回のように避けられたら、意地でも探して文句を言う自分が想像できてしまって、爆豪は息を吞んだ。なぜ普通科のモブみたいな人間に自分が固執しそうになっているのか、という未知が彼を襲った。その底知れない感情を彼女の個性として、「厄介だ」と溜め息をついた。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
