38本目 ページ40
泣いているのだろうか。爆豪はその涙に気付きはしたが、それを拭ってやるような仲でもないと見ない振りをした。どうして泣いているのだとか、なぜ急にこんな状態になるまで避け続けたのかだとか、自分が律儀に迎えに来ている理由だとかを考えたが、どれも腑に落ちるような解は出なかったので彼は不満気に椅子に腰掛けた。
その音で僅かだが呼吸とは違う揺れ方をした布団を、爆豪は見逃さなかった。寝息というには不自然にもぞもぞと動く様子はまるでこちらを伺っている様で少しばかり滑稽に見えた。
「起きてんだろ」
声を掛けると、わかりやすくビクリと動いて、突然布団から出たかと思えばふらりとベッドに腰を落としていた。具合が悪いのなら急に動いて平気なわけないだろうに、なぜ無理をするのだろうかと爆豪は眉間に皺を寄せた。しかもこの体たらくで大丈夫などと強がるのだから、どうしようもない。何を馬鹿なことを言っているのか、とつい口に出してしまったほどである。
挙句、明日のことだのタクシーで帰るなど1人でどうにかすることしか口にしないものだから、爆豪にしては珍しく呆気に取られていた。彼女は目の前にいる、こんな時間まで彼女を待っていたヒーロー志望者には何ひとつ頼ろうとしない。その事実に苛立ちとも心外とも取れない感情が爆豪の心で波立っていた。
決して完全に回復したとは言えない顔色のまま笑顔を作る結縁を見ていると、ただでさえ波立つ心が余計にざわざわと荒れていく気がして気分が悪いので無理やり途中まで送ることにした。彼女は目を白黒させていたが、大人しく帰宅の用意を始めた。今更自分相手に何をびくびくと恐れているのか爆豪には理解できずにいたが、とにかくそれが不快だということだけがわかったので返事の代わりに舌打ちを零した。
暫く結縁の2，3歩先を歩いていた。横に並ぶ気配も無くぴたりと後についてきているのは足音でわかっていたので、気がかりだった質問を投げかけた。なるべく話を逸らしたいのか、どうでもいいことをつらつらと語っている。切り捨てて本題に入ってもよかったのだが、それでまた委縮されても余計煩わしいと必死の脱線に付き合ってやった。
1度会話が終わって、タイミングを見計らって再度無理をした理由を尋ねる。問われるなり、今度は彼女の目が揺らぎ出す。明らかに先程までとは違う狼狽え方をしているので、爆豪は様子を見ようと結縁側の蛍光灯に近付こうと足を動かした。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
