37本目 ページ39
「ゔ」
向こうも爆豪に気付いたのだろう。酷く疲れ切った顔に気まずさを滲ませていた。およそ女子高生のものとは思えない声を漏らした後、一連の流れを無理やり無かったことにしようとしたのか、彼女は顔を逸らした。爆豪になど会っていない、知らんぷりしろ、とでも言う様に。
爆豪は薄々その思惑に気が付いていたが、ここ数日間の鬱憤と少しばかりの良心によって無視をして声を掛けた。結縁は諦めた様な表情をして、やはり苦しそうに息を吐いて、嘲る様に口元を歪ませて意識を失った。
完全に気絶しているのだろう、再度呼び掛けても反応は返ってこなかった。少し早い彼女の呼吸がやけに耳に響く。爆豪は珍しく焦っていた。暫く会わずに悶々としていた人物が現れたと思ったら気絶していて、恐らくその理由は個性のキャパシティオーバーによるものだ。今まで会わなかったのも、結縁が個性を行使して強引に避け続けていたのだとしたら辻褄が合う。あれだけ強力な個性だから相当の労力を要したのだろう。それを２週間も続けていれば普通の人間なら倒れても無理は無い。寧ろ2週間も粘ったのは異常である。それ程自分と会いたくなかったのだろうか。そう考えると無性に苛立つのは何故か。そんなことを考えながら結縁を保健室まで運び、自分は授業へ向かった。
帰りに一応様子を見に行くか、と爆豪は思った。本来ならば運んだところまででも面倒なのだが、どうしてこんな無茶をしたのか、彼女の口から聞きたいと感じたからだ。
放課後、ホームルームを終えていつもの様に早めに教室を出る。いつもと違うのは向かう先が校門ではなく、結縁のいる保健室であることだ。無意識に早歩きで向かい、ノックもせずに扉を開けると先客がいた。驚いてこちらを見る顔に爆豪は見覚えがあった。最初に結縁に文句を言いに普通科の教室に行った時、彼女の近くで話していた生徒だ。普段すれ違う時も一緒にいるのを見かけたから、恐らく仲の良い友人なのだろう。クラスメイトが心配で様子を見に来てもおかしくはない。
「ああ、邪魔になっちゃうか。Aが起きたら荷物渡しといてください」
こちらを認識するなりベッド横の椅子から立ち上がってそう話した。彼女が指を差した先には結縁の通学鞄が置かれていた。伝えるなり彼女は「後お願いします」と爆豪が答える隙も無く保健室を去っていった。
帰るわけにもいかず沈黙が支配するその空間に腰を下ろすと、寝息を立てる結縁の頬に筋ができたのが見えた。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
