36本目 ページ38
「なんか爆豪イライラしてね？」
「今日の演習もキレキレだったのにねー」
クラスメイトの声など彼の耳には入っていないが、確かに爆豪はここ数日もやりとした煩わしさを抱えていた。原因は間違いなく保健室の件であるが、それだけではなかった。あれを境にぱったりと、ここ最近の悩みの種である結縁Aに遭遇しなくなったのである。自分がどれだけ避けようとしても最終的には鉢合わせてしまう程だったのにも関わらず、ここ2週間は気配すら感じていない。
聡明な頭脳を持つ爆豪は既におかしい、と感じていたが、会わないならそれでいいと始めこそ放置していた。それが職場体験を挟んだとはいえ2週間も続けば不自然だと気色悪さを拭えずに、苛立ちとして募っていった。相手に連絡して尋ねればいいのだが、自分から連絡を入れるのは何かが邪魔をしているかの様に気が乗らなかった。何かしたなら向こうから連絡が来るものだと思っていたし、それも苛立ちの要因の1つであった。
保健室の件で彼女が動揺していたのは明らかで、それは爆豪も理解していた。更に言えば爆豪の方も何も感じなかったわけではない。授業の戦闘以外で自ら女性に触れる機会など無い彼にとって、あの時感じた全てが新鮮であり、忘れ難いものだった。抱き寄せて収まる華奢さだとか、自分より少し低いであろう体温だとか、布団の中で香った髪の毛を容易に思い出せてしまう。どうでもいいと思っているのに、ふとした時にフラッシュバックして一瞬でも頭を支配されるのが鬱陶しいと思った。極めつけは最後に見た彼女の表情である。彼女もまた男性経験はクラスメイトとの一般的な交流以外ほぼ無く、ましてや同じベッドに入ったことなど無かった。暑さと羞恥でみるみる染まった頬に、それによって少し潤んだ瞳と上ずった声による律儀な謝罪に爆豪は何も言えなかった。普段の彼であれば、鬼の形相で追いかけてでもその状況へ至った詳しい説明を求めるはずだ。それが頭から飛ぶくらい、あの一瞬は彼女から目が離せなかった。
鳩尾と心臓の間、その奥辺りが鳴いたようなむず痒さは初めての感覚で、爆豪は気色が悪いと感じた。ただ、あのまま見合っていたら結縁の表情はどうなっていたのだろうか、とかそんな好奇心があったのは認めたくない事実であった。
そんなこんなで文句のひと言でも言いたいのに肝心の相手がおらず、悶々とした気持ちが積もっている矢先のことだった。結縁Aが憔悴した様子でベンチで休んでいたのは。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
