30本目 ページ32
これは大変不味い。逃げるにも走れないこの状況では結果が見えている。私がすべきことは……！
「よ、よく私だってわかったね？」
そう、時間稼ぎである。会話をして気を逸らしつつチャイムがなるまで持ち堪え、チャイムがなった瞬間に「いっけなーい教室に戻らなくちゃ」という作戦だ。
「馬鹿にしてんのかてめぇ」
あ、駄目そう。下手に話さない方が良かったかもしれない。じゃあどうしよう。どうやってこの場を乗り切ろう。先日の女生徒の言葉を考えれば、そもそも保健室で2人だけというこの状況が既にアウトだ。いやでも仕方無くない？ そんなことを考えているとまた足音が近付いてきた。
――足音の主がもしあの女生徒だったら。こういう時の、嫌な想像は当たるのだと先程実感したばかりだった私は焦って爆豪に向き直った。
「爆豪お願い！ 少しだけ協力して」
「はぁ！？」
「爆豪の為でもあるから！ 暫くここ潜ってて！！ お願いします！」
ああでも、爆豪はベッドでいいとして私はどうしよう。掃除用ロッカーは用具でいっぱいだ。ベッドの下も備品が積んであって隙間が無い。この際私だけ何事もなかったかのように座っていた方がいいか。それでもあの女生徒と2人は気不味いどころの話ではない。足音が止まる。3回目のノックをが響くより早く、私はグンと後ろに引っ張られた。衝撃に備えて強張った身体を存外優しく包んでいたのは誰でもない爆豪の身体だった。嘘、今、どうなっているの。
「あれ、先生いないじゃない」
あの声、やはり彼女だったんだ。今のところはバレてないようだ。しかしこの状況で緊張しない程私の神経は図太くなく、心臓はバクンバクンと鳴り響いていた。この状況とは、つまり私と爆豪が密着して横たわり、その上に布団が覆い被さっている状況である。目の前には思いの外厚い胸板、腰にはガッチリ腕を回されて固定され、大きく動くのは困難だ。大変言いにくいのだが要するにまあ、かなり強く抱き締められてしまっている。
足音が遠ざかり、再度ドア開閉の音がする。廊下から響く足音が完全に聞こえなくなるまでの間、ずっとこの体勢だった。
さて、ここからどうしよう。予想外の方法とはいえ助けてくれた彼に礼を言うべきだろう。ただ、私は今情けないことに赤面してしまっている。緊張と混乱のせいだろうが、それを見せるのも誂われるのも嫌だ。
ああ、本当にもう、心臓さえ少し静かになってくれたらもっと頭が回るだろうに！
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
