29本目 ページ31
爆豪勝己をとことん避けて学園生活を送る。その難易度が高いなんてものではなく、超ハードモードだという事実に頭を抱えるのはそう遠くなかった。
いや、改めて考えるとおかしいでしょうこのエンカウント率。通学路で見かけて慌てて遠回りをする。トイレに行く時に廊下ですれ違いそうになり即Uターンをする。食堂では大体近くにいるので買ったものを教室で食べる。教師からヒーロー科付近での頼まれごとされる。とまあ挙げたらキリがない。本当に、自分に迫る悪縁にも気付かない程には気を遣っていた。
「珍しいね？ Aが怪我なんて」
「や、本当それ。というかごめんね、ボーッとしてて」
保健室前まで肩を貸してくれた悠香に対して簡単に礼を言い、「ここまでで大丈夫」と彼女には授業へ戻ってもらった。まったく私としたことが、バスケ中に汗で滑って転んで足を痛めるなんて。最近あまり縁を見ていなかったせいだろう。何にせよ起きてしまったことは仕方がない。大したことない怪我でよかった。リカバリーガールは簡単な処置の後、少し休んでから授業に戻るよう私に言って保健室を出ていってしまった。きっとお忙しいのだろう。お言葉に甘えて体育はこのまま休んでしまおう。
「痛……」
ぼやきと共に溜め息が漏れる。何とはなしに手を見るとやはりそこには赤い縁がくっきりはっきりと結ばれて張られていて、溜め息は深くなるばかりだ。いや待てよ。縁が張っている？ 冷や汗が流れる。廊下から足音が聞こえる。嫌な思考が脳を掠めた。通常、縁というのは緩い糸のようで、こんなに張ることはない。足音が保健室前で止まる。扉が開く音が響くのと、私がベッドに潜り込むのはほぼ同時だった。落ち着け私。爆豪じゃない可能性だってある。
「あ"？ 誰もいねぇのかよ」
なんてこった。ジーザス。マンマミーア。この声真似をしたら確実に喉がやられそうな低い声は爆豪勝己本人に違いない。舌打ちをしながらカチャカチャと何かをやっている音が聴こえる。恐らく、軽度の怪我だから自分で処置をしようとしているのだろう。立ち上がって歩く音がした。そう、そのまま戻って。どうか気付かないで！
足音が消える。行った……？ でも、ドアが開く音はしていないような。じゃあどうして。
刹那、布団が消えた。いや、正確には剥ぎ取られた。誰に？ 目の前の爆豪に。特に何も始まっていないのに終わった、と感じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
