2本目 ページ4
午後の授業もいつもと代わり映えなく進んでいき、欠伸を噛み殺しながら淡々と板書を写す。もう1度大きな欠伸が出そうになり、反射的にシャープペンシルを持っていない左手で口を押さえた。
ああ、危なかった。さすがに授業中大っぴらに大欠伸は出来ないわ、と。左手を口から離して机の上に置いた時、小指の第2関節付近にうっすらとそれは視えた。
糸の様な赤い縁が結ばれて、並んだ机の間を縫うように教室の外へと続いていた。私は今縁なんて視ようとしていない。でもこれは確かにいつも視ている縁に近くて、いつもと全く違うのはそれがある場所と色とまるで実体があるかのように触れられることだった。
縁は普段、体の内から他のものへ繋がっているように視えるはずだ。友情なら黄色、事故や怪我なら黒、他人の恋愛なら桃色、というように。小指に出現するなんて初めてだった。試しに教室全体の縁を視ても、その赤い糸は薄いくせに存在感を放っていた。
……信じられない。あれだけ待ってた時に出なかったのに、どうして今更。本当に繋がっているのだろうか？ 引っ張れば引っ張る程糸は伸び、やめると元通りになる。つまりこの世のものではない、紛れもなく私の個性。それなのにまだ信じられないでいた。
「じゃあ次の問題を、さっきから百面相をしていて忙しそうな結縁さん」
教室中から小さな笑いが起こる。周りにはやっぱりこの糸が視えていないのか。羞恥で頬を染めながらも内心はそんなことを考えていた。
＊
「やっぱり、消えない……」
翌日も糸は消えなかった。それどころか本当に少しだが濃くなったような気がする。とりあえずわかったことは、これは縁を視ようが視まいが常に存在していて、他人には視えないということだ。
この糸を辿れば、運命の人がいる。そう考えると鼓動が早く感じるのだった。縁が出来た状況を考えれば、この学校内に運命の人がいることが想像出来る。緊張はするが、放課後にでも糸を辿ろう。どんな人であれ見ておかなくてはどうにも出来ない。
緊張と不安、少しの期待と幼い頃のときめきを思い出しながら、放課後を待った。さすがに食堂では見つけられなかった。あんまり大袈裟にやって友達にバレたら面倒臭いからね。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
