天邪鬼 -Ren Meguro- (ページ13)

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佐「…め、めーめっ！！！」

「…っ！？」

ラ「やっとこっち見た！」

佐「お前さっきからずっとぼけーっとしてたぞ！めめらしくない！」

いつも通りの楽屋。
時計を見ると雑誌の撮影まで25分と言ったところ。
メンバー各々は髪型をチェックしたり話したりじゃれてたり。

佐久間くんとラウールは椅子に座って少し不安そうに俺を見てくる。やべ、心配させちった。

「大丈夫。ちょっと考え事。」

佐「ほんとか～～？？何かあんなら聞くぞ～？」

ラ「めめがあんな真剣な顔してるの珍しいよね！俺一瞬違う人かと思っちゃった！」

「失礼な」とラウールのほっぺをもにゅもにゅする。「やめてよ～～ｗ」と笑いながら満更でもない顔をするラウールを横目に佐久間くんが立ち上がった。

佐「どこか悪いんなら早く言えよなー！なんせ、俺たちにはメジャーデビューが控えてんだから！」

ビシッと俺を指さしてポーズを決めながら言い放つ。ラウールも「デビュー！」と改めて実感しているようだ。

俺たちSnowManはようやくデビューを果たした。

宇宙Sixから移籍し、酸いも甘いも共にしてきたこのメンバーとデビューするのはこの上ない幸せなこと。

デビューが決まってからは今日みたいに雑誌の撮影やバラエティ、来月には音楽番組も控えている。引っ張りだこ状態だ。

ふと机に置かれた飲みかけの缶ジュースに目をやる。

あの日、文化祭で2人で飲んだ銘柄。
2人でした約束。

ねえ、俺は果たしたよ。
これで終わりじゃないけど。
まだまだ上を目指すけど。

それでも第1関門は突破したんじゃね？

…お前は何処で何してんの、鬼ヶ峰。

康「あっこれやろ？阿部ちゃんが最近ハマってる言うてたバンド！」
阿「そうそう！この曲、すっごい良くない？」

缶ジュースを飲み干そうとしたそのとき、

阿部ちゃんの携帯から流れた音楽に一瞬フリーズしてしまった。

康「うぉっ！？なに？！どしたんめめ！」
阿「急に立ち上がって…あ、ちょ俺の携帯！」
「ごめ、ちょっと見せて！」

5年以上経った今でも鮮明に覚えているこの音、
この声。

阿部ちゃんの携帯に映った動画には何も変わらない、

あの日のまんま儚くて綺麗で

死ぬほど待ち焦がれていたそいつが歌っていた。

「期待の新星バンド、遂にデビュー！」と書かれた見出しを添えて。