10人目は頑張り屋さん22 (ページ44)

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届かぬ声ページ44

深澤side

もう見ていられなかった。

俺達みたいな奴らが騒いだって
結局は、"権力" に負けてしまうんだから。

不当な権力に勝つためには同じだけ、もしくはそれ以上の権力を持つ人を連れてくるしかなかった。

『...電話してくる。』

誰に言うわけでもなく、そう呟いて楽屋を出る。

♪プルルルルプルルルル...♪

？「もしもし？」

『滝沢くん、お疲れ様です。深澤です。』

滝沢「なに？どうしたの？」

『...Aは限界です。このままだったらAは
この世界から消えてしまうかもしれない。』

滝沢「.........」

『早川さんが来てから、本当に具合が悪くなりました。きっと相当、プレッシャーをかけられているんだと思います。

お願いします。早川さんの暴走を止めてください。』

滝沢「..........」

『俺達がいくら言っても、時田さんが言っても
全然ダメなんです。

俺らや時田さんの進退を人質にして、Aを脅して、
無理やりステージに立たせているんです。』

滝沢「...早川さんのことは、報告を受けているよ。

今、新しい統括責任者の任命を急いでいるところだから、遅くても9月の人事異動までになんとかする。」

『それじゃ遅い。遅すぎる！

Aは違う病院に行って、薬をもらって、ODをしています。今は倒れる程じゃないけど、このままだったら同じことの繰り返しになってしまう！』

滝沢「えっ...」

『Aはもう限界です。
いや、限界なんて遥か昔に超えている。

気力だけで仕事をしています。
それでも、もう無理なんです。』

滝沢「だけど...」

『...知っていますか？
今のAは、自分の感情をコントロール出来なくて
気づいたら泣いているんですよ。
ご飯だって、ほとんど食べられていない。
それに早川さんから暴力だって振るわれている。

そんなんで守ったって言えますか？
Aは大丈夫だって、本気で思っていますか？』

滝沢「......」

『こんなことが続いたら
いくらタフなAでも耐えられない。

滝沢くんが守りたいものってなんですか！？
地位ですか？名誉ですか？』

滝沢「そんなの...」

『滝沢くんが昔から守ってきたのは
Aの笑顔じゃないんですか...？

あの子は、滝沢くんのためにも頑張っています。
滝沢くんが指揮をとるこの事務所を守るために頑張っているんです。

今のAを守れるのは滝沢くんだけなんです。』