10人目は頑張り屋さん22 (ページ14)

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康二side

『ただいま！！...え？』

楽屋に戻ると俺のカバンの前に座り込んどるA。
どうやら俺のカバンの中身を漁っとるようやった。

こんなこと、もちろん初めてで
正直、どうしていいか分からんかった。

せやけど、このまま放っておくわけにもいかなくて...

『...A？何しとるん？』

恐る恐る声をかけると
ハッとしたように振り返ったA。

「あ...ごめ..っ...」

『怒ってるんやないよ？なんかあった？』

「えっと...」

『絶対に怒らへんから理由教えて？』

「あの...薬...が欲しくて...」

たしかに俺達も、Aの様子に対応できるように
2錠ずつ薬を保管しとるけど...

これまで通り、Aは
ふっかさんに3日分ずつ貰っているはずやった。

『ふっかさんに貰ってへんの？』

「...ごめんなさい」

下を向いて肩を震わせるAに
これは一大事だと、俺まで慌ててしまう。

『え？どうしたん？』

「ちゃんと2日前に3日分の薬を貰ったの。
だけど、昨日ちょっと多く飲んじゃって...」

3日分やったら、少し多く飲んでしまっても
倒れてしまうまでにはならへん。

橘先生から、そう聞いとるから
身体に緊急を要する何かは起こってないだろうけど
多く飲んでしまうということは、それだけ心が不安定なわけで...

すごく心配やった。

やけど、ここで詳しく話を聞き出そうとするのは
あんまり良くない気がする。

せやからあくまで、冷静に、適切に。

『そうやったんか...ごめんな。
俺の勝手な判断で薬はあげられへん。

ふっかさん達に聞いてもええ？』

薬はふっかさんと時田さんを中心に管理しているから
緊急の時以外は勝手な判断で飲ませたり、渡したりすることは出来ひん。

これは俺らの約束事やった。

「...ふっかさん達には言わないで。」

『でも...』

「...1日くらい薬なくても平気だよ。
みんなも忙しい時期だし、余計な心配をかけたくないから。」

『せやけど、辛いんとちゃうん？』

「...1日くらい大丈夫。うん。大丈夫。」

『でも...』

「ごめん。次の仕事があるんだ。
時田さんが下に来てくれているからもう行くね。」

『え、ちょっと待ってや。』

「...お疲れ様。また明日ね。」

不安な気持ちを悟られたくないように
足早に楽屋を出て行ってしまったAの様子に
不安が募った。