10人目は頑張り屋さん21

. ページ31

深澤side



そろそろ時間もヤバいから、うずくまるAを
無理やり立たせて、衣装場に連れて行く。




自分で着替える元気なんてなくて
衣装さんに着替えさせてもらっているAだけど
あと10分もしたらステージに上がらないといけない。





ステージ上は、こことは比にならないくらい眩しいし
頭痛がピークのAが、耐えられるかと言われると
かなり厳しい気もする。





どうしようかと、誰もが頭を悩ませた時だった。




翔「これ！
衣装さんと滝沢くんには許可もらったから。」




そう言って走ってきた翔太の手には
グリーン系のカラーサングラス。




佐「なるほど。サングラスか。」




この舞台は歌舞伎であって、コンサートではないから
普段はサングラスなんてつけないけれど
この際、仕方ない。





翔太からサングラスを受け取りかけさせてみると...




「...だいぶ光が優しい。これなら大丈夫だと思う。
ごめんね。ありがとう。」




頷きながら、そう言ったA。





完全に大丈夫でもなければ
痛みが去ったわけでもないだろうけれど
負担が軽減したことに間違いなかった。





佐「いける？」



「ん、大丈夫。頑張る。」




佐「ん。俺らの状態はお客さんには関係ない。
しっかりやるぞ。」



「はい！」



スタッフ「雪ちゃんは？」



スタッフ「ここです！」




スタッフ「あ、いた。頭痛は？平気？」




「さっきよりは大丈夫です。」




スタッフ「よかった。
もしどうしても無理だったらハケちゃっていいから。

ステージ上でうずくまるのだけはなしでお願い。」




「はい。」




スタッフ「舞台袖に保冷剤を持ったスタッフを待機させておくから。上手くクールダウンしながらやって」




「分かりました。」





スタッフさんと軽く打ち合わせをして舞台袖に。





もちろん心配だけど、俺達の舞台を見るために
お金を払って、時間を使って、ここに来てくれている人がいる。





その人達に俺達のコンディションなんて関係ないから
舞台上では常に完璧でいないといけない。



ジャニーさんや数々の先輩方に教えられてきている。





「...ふっかさん。」




『ん？どうした？』




「私は出来るよ。
絶対に最後まで舞台を降りないから。」





サングラス越しに見えたAの目は本気だった。





『ん。分かっている。今日も頑張るぞ。』






________
お題箱でいただいたリクエストでした。

ありがとうございました！

Twitter→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す