10人目は頑張り屋さん12

募る不安 ページ9

翔太side



玄関のドアを開けると
玄関と廊下の境に横たわる見慣れた人の姿。



今朝、帰ってきてそのまま倒れたのか...？




蓮「え、嘘でしょ...」




『っ！！おい！A！A！』



絶句するめめを押しのけるようにAに駆け寄り
強めに肩を揺すって声をかける。




蓮「っ！身体がすごく冷えちゃっている...」



Aの腕に触れためめが、自分が着ていたコートを
Aにかけて、必死に身体を摩り始めた。




「ん...」



『っ！おい、分かるか？』



「え...しょっぴー...？めめ...？
なんで..？あれ、私またやらかした...？」




蓮「はぁ...良かった...」




目を覚ましたAに、心底ホッとした様子のめめ




ODの時も、手首を切った時も
めめはグッタリしているAを見ているわけで...


現場に居合わせためめは
場に居なかった俺よりも、何十倍も苦しかっただろう


二度と見たくない惨状を再び前にして、焦るのは当然だった。




蓮「あ...
もしかして帰ってきてそのまま寝ちゃった？」



「多分...全然記憶ない...」




蓮「マジで焦った...」




「ほんとごめん。...あ！！仕事！」




『うん。
もう迎えの時間だからシャワー浴びられないけど...』




「うわ...やらかした...
ごめん。着替えだけしてきてもいい？」




『時田さんに言っておくから、着替えておいで。』




「ん。ありがとう。」




そういって起きあがろうとするが
目眩がしたのか、下を向いてギュっと目を閉じる
Aに心配が募る。




蓮「大丈夫...？」



「ん...平気。」




明らかな作り笑いを浮かべたAは
フラフラと寝室に消えていった。




『あれは、絶対大丈夫じゃないな...』




蓮「うん...相当無理してるよ」




『もう、どうしたらいいんだろうな...』




蓮「Aちゃん、靴履いたままだったね...
ほんとにそのまま倒れ込んだってことだよね？」




『だな。多分帰ってきて、気が抜けたんだと思う。』




Aが寝ていた場所の周りには
カバンの中身が散乱している。


ここまで中身が散乱するってことは
カバンを持った状態のまま倒れ込んだんだろう。



『さっきも “また” って言ってたし
ここ最近、ずっとそんな感じなのかもな。』



蓮「うん...あ、スマホ。」



そう呟いためめが散乱した荷物の中から
真っ黒なスマホを拾い上げた。



蓮「やっぱり充電切れだ...」



『使う時間がなかったから
充電切れに気づかなかったのか...』

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