・・・＊9 ページ10
・
あずきが変なタイミングで注文をつけたから慌てて注文表に記入する。
え、なんだって、かきはら、ともや？
｢ぶんちゃんはね、私の高校の後輩なの。春から同じ学部だから紹介しとこってね。｣
｢よろしくお願いします！｣
ちょっと関西の訛りが入っているのは、気の所為だろうか。
あとぶんちゃんってこの好青年のことなの？
てか、ざわくんがさっきから早く戻ってこいって顔でこっちを見ている。
｢そっかそっか、じゃあまた大学で会おう！｣
｢ごめんね、バイト中に！｣
｢うん、うん！｣
のほほんと手を振るあずきとにこやかなぶんちゃん？
お似合いだなとか思いつつ、そういえばいつかのあずきとの会話の中にブンチャンとやらが出てきていた気もする。
ずっとカタカナ表記だとばかり思っていたけど本人を見て、多分ひらがな表記だなと確信した。
注文表を厨房に貼る。
｢なにはなしてたの？｣
ざわくんが厨房前で料理を待ちながら聞いてきた。
私でもよく分からないよ。
｢あずきが来てて、後輩紹介された。｣
｢変なタイミング。｣
｢ぶんちゃんっていうらしい。｣
｢ブンチャン……｣
とか言いつつざわくん配膳する時、無意味にあずきの方に行ってぶんちゃん確認してるし。
｢ぶんちゃんだなあれは。｣
｢ひらがな表記ね。｣
｢私語！｣
店長から一喝されて仕事に戻る。
今日はなにやら、新しい出会いをしたようだ。
｢お疲れ様でしたー。｣
｢僕もうちょっと残る。｣
｢おー、お先に！｣
バイトが終わって家に帰る。
電車に揺られながらもふと、思いにふけっていた。
自分ってなんで先生になりたいって思ったんだろ。
小さい頃はケーキ屋さんになりたかったし、少し大きくなった時は歌手になりたかったし、高校一年生の時は、小説家になりたかったっけ。
どれも現実味がなくてやめたけど。
ケーキ屋さんになる人はなるし、歌手になる人はなるし、小説家になる人はなる。
そんな考えを持ち出したのはいつ頃だっけ。
｢ただいまー。｣
｢おかえりー、ご飯出来とるよ。｣
｢ありがと。あれ、お父さんはまだ帰ってきてないん？｣
｢あー……まだみたいやね。先お風呂入りん。｣
｢はーい。｣
この日常守るために、その考えを持ったのかもしれんね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：糯 x他1人 | 作成日時：2020年4月29日 12時
