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これって、家で読むだけなのかな
それとも…結婚してる?
いや、それだったら部屋にあげてないでしょ
いろんな思考を巡らせ
"雨ニモマケズ"を開くと
1枚のチラシが足下に落ちた
『朗読会…?』
この人、朗読してるんだ
通りで絵本とか詩集があるわけか
チラシをはさみ直して雨ニモマケズを読んでいると
ところどころマーカーで線が引いてあり、それは
きっと、彼が読んだ文字
そう思うと何故だか胸が熱くなった
その本をもとのところへ戻しもう一度ベッドに寝転ぶ
ギィ…と木がきしむ音が鳴り、やがて静寂が訪れる
不思議な時間だった
それから目が覚めたのは夜の8時
身体を半分起こすと
彼は机に向かって何やら作業をしていた
声をかけようか迷い、とりあえずベッドから降りようとすると
ギィ…ときしむ音で彼が振り返った
「あ、起きた」
ニコニコしながらこっちへ歩いてくる
「足どう?」
『だいぶよくなりました』
そっか、と微笑んだあと
思い出したかのように
「名前まだ聞いてなかったね
僕は河合雄一」
『あたしは香清花南です』
「よろしく、花南ちゃん」
トクン…
……河合雄一さんかぁ
ん?ん!?
『河合雄一さんって…
朗読Wordsの』
「え、僕のこと知ってるの!?」
『毎週聴いてます
素敵な声だなぁって』
「ほんとに? やった」
その声はラジオと同じで
いや、ラジオより特別な声だった
『昨日のSTAY GOLDすごくよかったです』
「嬉しいな そんな風に言ってもらえて
よし! 今読んじゃおう」
『いいんですか!?』
「立ちはだかるこの山は
僕が言い訳を積み上げて出来たのだから…………」
ほんとに河合雄一さんなんだ…
あったかくて優しい声
『…ありがとうございます』
「花南ちゃんには"特別"にだからね」
"特別"
今まで生きてきたなかで
この言葉をこれほど深く考えたことはあっただろうか
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作者名:にゃんこけし | 作成日時:2017年11月23日 18時