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「 こちらが白嶺さんの滞在するお部屋になります。
扉は全てオートロック、
呪霊の侵入に備え、結界も張ってあります。
……まぁあなたなら心配ないでしょうが、
念には念を押しておけと、上からの命令です。」
『 住居は確保しとくから働く分は働け、って事ね。
ありがとう伊地知さん、
何かあったらまた連絡入れさせてもらうね。』
「 わかりました。」
一礼してから車に戻った伊地知さん。
私はだだっ広いマンションの一室に取り残され、
盛大に溜息を吐いた。
�� 高級マンションの最上階。
�� 4LDK。
�� ルーフバルコニー付き。
�� ジャグジーあり。
と、まぁ表向きには最高の物件。
……ただし残念だったな、私はそうは思わん。
何故なら＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『 なんで宿泊先に先客がいるのさ。』
そこかしこ、至る所に、どこを見ても。
呪霊、呪霊、これまた呪霊。
ふいと視線を逸らすと別の呪霊がいて、
足元に視線を落としてもこっちを見上げてるのがいる。
お前今スカートの中覗いてたろ。祓うぞカス。
『 ……口寄せ・キュウビ。』
キュウビは私の使役する式神の中でも、
特に呪力の強いとされるもの。
九つの尾を持ち、狐火を操ることを得意とする。
ちなみにキュウビの炎は実害無いので安心されたし。
「 ………… 」
『 いいよ、全部燃やして。』
「 ……ｷｭｵｫｫｫﾝ!!!! 」
甲高い鳴き声が部屋に響き渡り、
音の波に乗るように炎が部屋中へ広がっていく。
炎に充てられた呪霊は、
断末魔をあげる隙すら無く雲散霧消していった。
さすがはうちの子、超つぉい。
『 ありがとキュウビ、戻っていいよ。』
ｸｩﾝ、と犬のように鳴いたキュウビは、
私の影の中に消えた。
……さてと、じゃあこれから何しよう。
荷物も整理するってほど持ってないし、
夜まではまだまだ時間あるし。
『 下見しよ、犯罪都市がどれほどのものなのか。』
そんな軽いノリで、
私は米花町に繰り出すことにした。
米花町と言っても実際来たこと無かったし、
どんな犯罪がどんな頻度で起きて、
どんな人が巻き込まれやすいのか、とかね。
まぁアレですよ、百聞は一見にしかずってヤツ。
『 病院、学校、墓地……
片っ端から当たってみるとするかなぁ。』
私はこの時、
犯罪都市のことを甘く見ていたのかもしれない。
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作者名：杠葉 | 作成日時：2021年7月15日 8時
