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「 ……子どもは入れない方がいいですよ。」
舞台の上にしゃがんでいる人物……
恐らく女性だ、彼女は体半分をこちらに向けて、
俺達の方を一瞥した。
「 ! (この距離で俺たちの気配に気づいたのか?) 」
「 ……これは失礼しました!
実は自分、探偵をやってまし、て…… 」
……あれ、俺、あの人に見覚えある。
あの時のあの人だ。
灰原を助けた上に傷まで消した、
アイツらに「魔法使いのお姉さん」と呼ばれてる女性。
見覚えがあるのは安室さんも同様らしく、
彼女の顔を確認した途端、言葉を詰まらせていた。
「 君は…… 」
「 ……何でこんな所に来てるのさ、特級のボウヤ。
それから……そっちの、警察官のお兄さん。」
警察官のお兄さん
彼女は今、間違いなくそう言った。
警察の中でも秘匿されているはずの安室さんの存在、
つまり、ゼロの存在を知っている。
彼女、本当に何者なんだ?
「 あの人、安室さんが警察官って知ってるの!? 」
「 ……やはり、君か。」
「 ? 何のこと? 」
「 警察庁のデータベースが、
昨晩、一時的にハッキングされていた。
君がハッキングして、
僕の正体を知った……違うかな? 」
警察庁のデータベースをハッキング!?
本当に何なんだこの人、
警察庁の機密情報まで盗み出してるのか!?
「 ん〜……惜しい!
指示したのは私だけど、
やったのは私からの指示を受けた人だよ。
誰がハッキングしたか分かった? 」
「 痕跡が残っていないんだ、わかるわけがない。」
「 そっか〜! やっぱり? 伊地知さんすごーい! 」
「 っ、そんな軽い問題じゃ……ッッ!!? 」
「 どうしたの安室さ、ッ!? 」
飛び出した安室さんが急に立ち止まったと思ったら、
俺もその異様な光景に、
無意識に足を止めてしまった。
「 だから入ってこない方がいいって言ったのに。」
目の前に広がるのは、薄暗い劇場。
鉄の臭いが漂うナニカ。
くるりとこちらを向いた彼女の右半身は、
赤黒い液体で染まっていた。
……ずっと左側しか見えなくて、気がつかなかった。
彼女は右手に持っていた鉄の扇……
古代中国で暗殺に使われた暗器に似た物を持って、
俺達に、にこりと笑顔を浮かべる。
「 これ、警察で何とか出来るの?
無理だから私が呼ばれたんだよ、オーケー? 」
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作者名:杠葉 | 作成日時:2021年7月15日 8時