92 ページ43
＊
「今日は付き合った初日だからな。つまみ食いする程度にしとくからそんな固くなんなって」
つまみ食いってなに？！
一体どこまでがつまみ食いなの？！
と思ったしそうツッコミたくなるが、それを口にして彼の作った雰囲気を壊すのも興醒めだし、なにより私自身が彼とのキスが終わっちゃったらやだと思ってしまっていたのでここは大人しくこくりと頷くだけにした。
「かわいい」
彼はひとりごとのようにつぶやいて再度口づけを落としてきた。
もう私たちは付き合っているのだからキスを止める理由がない。
顎に手がかかり彼の巧みな誘導に口が自然と開いてしまう。
柔らかい舌の感触とうまく酸素を取り込めない苦しさで自由になった手で彼の肩を掴むと、彼の体温が手のひらに伝わってきて一瞬で肩から手を離してしまった。
「手、離すなよ。ちゃんと抱いてよ俺のこと」
囁いてまた顔が近づくので、急いで彼の唇に手を当ててキスをストップさせた。
「ちょっ、もうむり。なんでそんなこと言うの…恥ずかしくて耐えられないんだけど…」
「こんなの序の口だろ。キスで恥ずかしがんなよ。これから色々するのに」
「それは、そうなんだけど…
あのね、健人はそういう言葉を言うの慣れてるかもしれないけど…」
「慣れてねーから。
俺はAに触れたいし、Aからも触れてもらいたいから言ってるだけ」
「そか、わかった。じゃ次回からしっかり抱きつくように、その、するから…今日のところはとりあえず…もう、上着て…」
「なんで？」
「だって…私も着てるから」
「じゃAも脱ごっか？そしたらちょうど良くね？」
笑いながら言う。
「ちょうど良くない！」
私はふるふると首を振る。
「今こそ流される時じゃねーの？
お互い情熱と愛情の赤い薔薇を贈り合ったんだしさ」
それを聞いて私が声を上げた。
「あ！！」
「なに？」
怪訝な顔して彼の眉がピクッと動く。
「お花！水につけないと！今すぐ！」
覆い被さっている健人の胸を押しながら下からモゾモゾやって抜け出す。
これ以上はまずい。いろいろと。
彼も諦めたのか
「…そうだな。花束置いたままだったな」
と一応納得はしながらも
「だー！くそ！もう少し先までいけると思ったのに！」
と悔しがっていて、健人にとってのつまみ食いは一体どこまでのつもりだったのだ？！と考えてしまい、ちょっとほっとした。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 423人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にこ(プロフ) - ふぅかさん» 小説を読み返して幸せに浸る予定だなんて嬉しいお言葉ありがとうございます🥹お話に触れる時間がふぅかさんにとって楽しいひとときとなっていれば幸いです。またどこかのお話でお会いできることを楽しみにしています。ありがとうございました！ (3月9日 14時) (
レス) id: aba4acfcad (このIDを非表示/違反報告)
ふぅか(プロフ) - 完結おめでとうございます!! 本当に素敵な作品です🩷 3月末、寂しいです…が、にこさんの小説を読み返して幸せな気持ちに浸る予定です! また次作も楽しみにしてます! 応援してます! (3月9日 2時) (レス) @page48 id: af1a48aa9a (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - ふぅかさん» コメントありがとうございます♡世界観を気に入って頂けてよかったです！きちんと完結させるよう頑張りますので最後まで見届けて頂けたら嬉しいです♡引き続きよろしくお願いします (2月23日 15時) (レス) id: aba4acfcad (このIDを非表示/違反報告)
ふぅか(プロフ) - いつも楽しませていただいております! この世界観、大好きです! 応援してます! (2月23日 0時) (レス) @page26 id: af1a48aa9a (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - こたさん» いろんなことが一気にあってもう2月になりそうですけども。ご心配おかけしてたのならすみません🙏こんな時にリアル設定ってどうなの、とか思ったりしてますが、世界観を気に入ってもらえてるのならよかったです🥺優しいお言葉ありがとうございます🥺 (1月31日 1時) (レス) id: aba4acfcad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にこ
| 作成日時：2024年1月5日 17時
