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＊
「いや、特に。ただうちのお客さんでしょ？
それで少し話した時インスタ見てみて、って言われたからちょっと見てたの」
「あ〜たまーに来てるな。俺は接客したことないけど」
亮輔も中島さんがうちを贔屓にしてくれていることは知っていたようだ。
「てか、それ店のアカウントだろ？プライベートに使うなよ」
「あ、ごめん」
「ん。風呂入ったら？俺もう先済ませたから」
「わかった。はいってくる」
「おー」
のんびりした返事、気心知れた関係特有のテンション。
私の働く花屋は、もう付き合って7年になる彼氏が経営している。かつ、私はその彼氏と現在同棲中だ。
・
昼休憩に喫茶店に入った。
いつもの席は空いてるかな、と視線を巡らせた時、顔見知りの男性と目が合った気がして驚いた。
その男性は中島さんだったからだ。
こんなとこでふつーにコーヒー飲んでる…
今一瞬目があった気がするのは私の気のせい？
少し距離はあるから私の見間違いってことも…
もう今彼の視線は手元のテーブルに落ちている。
気づかれてないっぽいよね…？
あまり見たらダメだろうなと思い、平静を装っていつもの席に向かう。
その席の3席ほど後ろのソファー席に彼は座っていた。
彼に背を向けて座ると、おじいちゃんマスターがお冷を持ってきてくれた。
「たらこスパゲッティーください」
「いつものね」
と優しく笑って注文をとってくれる。
水を飲んでも背中の彼が気になって仕方がない。
もし私だって気づいてたら…無視したみたいに思われちゃうよね…
でも完全プライベートみたいなのに声をかけてもいいのかな。
悩んだ挙句私は立ち上がり、彼の元へと近づいた。
「こんにちは」
「ん？」
中島さんが私の挨拶にテーブルの書類から顔を上げた。
声の主が私だとわかると、真顔だった顔に笑みがさす。
「青木さんか。偶然だね。こんにちは」
「お邪魔してすみません。中島さんがいるのに気づいたので、ご挨拶をと…」
「いいよ、全然。いつ来たの？気づかなかった」
私だと気づいてなかったのか。
それなら声かけて悪いことしちゃった。
「今さっきです。
すみません、声かけてしまって」
「なんで？いいよ」
「入り口で目が合った気がしたんです。
それで…気づいてるのに挨拶しないのは気になっちゃって…」
「そうだったの？ごめん。たぶん考え事しててぼーっと見てただけだと思う。
気にせず声かけてよ。嬉しいし」
＊
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
