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やはり社交辞令ではなく、あれからわりとすぐ中島さんが来店した。
「家に飾る花を買いたいんだよね」
とのこと。
正体がバレたからか一気に距離が縮まり、話し方が砕けている。
私は店員という立場なのでそのままだけど。
「青木さんは家に花を飾る？」
付けているネームプレートで名前を知ってくれていたようだ。だが初めて呼ばれた。
ちょっとくすぐったい気もする。
「飾ってないんです」
「へぇ、意外だね」
「仕事で毎日見てるのもありますし。家に花があると、綺麗にアレンジしなきゃって、仕事頭になってしまうので、あまり飾ってないんです」
「えぇ？それほんと？」
「はい。仕事とプライベートは分けたいというか。中島さんは家で自分の曲聴いたりしますか？」
「…それは、確かに。あんま聴かないかも。でも家では作曲したりするから俺はいつも仕事のこと考えてるな」
「え、作曲ってすごいですね！さすがアーティスト」
「めっちゃ楽しいよ。作り出したら没頭しちゃう。
あ、インスタやってる？やってるなら俺の曲で自作のコンセプトムービー投稿してるから見に来てよ」
「インスタは、このお店のアカウントなら持ってるので…あとで見てみます」
「うんぜひ。ROSSOっていうやつ。それは作曲はしてないんだけど、作詞と、あとムービーが俺監修なの」
「へぇ、すごい…」
「超クールに撮れてるから、青木さん俺のファンになると思う」
茶目っ気たっぷりに言われた。
「ふふ、そうですね」
楽しく会話をしたあと、彼は季節の花々を購入してくれた。
「また来るね」
「はい。お待ちしております」
・
その夜、家で彼の言葉を思い出しインスタを開いてみた。
アカウント名は聞かなかったけど名前で検索したらすぐに出てきた。
【ROSSO】と書かれたポストを見つけてタップするとすぐにムービーが流れ出す。
店で会うときとまた違う感じだ。
大人の男性…色気やばいな〜。
「何見てんの？」
「わぁ！！」
後ろからの声にびっくりして思わずホームボタンを押して画面を閉じてしまった。
「え、男？浮気？」
「ちがうよ！！」
見ていたポストの投稿主は男性ではあるけど、何もやましいことはない。
私を訝しげに見つめる彼氏に、先ほど閉じてしまったインスタの投稿を見せる。
「中島健人さんのインスタ見てただけ」
「へぇ〜。なんで？A、アイドル好きだっけ？」
亮輔が腑に落ちない顔をしている。
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
