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「平気？なわけないよね…無理しなくていいから」
バックミラー越しに心配そうに様子を伺っている。
「もう、大丈夫です。中島さんがいてくれたので…心強かったです。
まさか突入してくるなんて思ってもみなかったので、ちょっと気が動転してしまいました。
私、皿投げたりはしなかったはずなんですけど…？」
空気を変えるように言うと
「え！まじ？！俺にはパリンパリン聞こえたから突入したのに！」
彼は大袈裟に言う。
「じゃあ、アイス買って帰ろう」
ハンドルを握り笑顔で言われた。
「ほんとに食べたかったんですか？
私についてくる口実かと思いました」
「口実じゃないって！まじでアイスを買うために俺は車を出しただけだから」
優しさの押し売りをしない人だった。
家に着き、中島さん宅の玄関に入ると心がとても落ち着いた。
いつの間にかここが私にとって安らげる場所になっている。
「先にお風呂入ってそのあとアイス食べよっか。風呂上がりに食べたくね？」
「いいですね。そうしましょう」
「しゃ！じゃお湯溜めてくる」
彼は風呂場へ行ってしまい、私はアイスが溶けたら困るので、食べるまで仕舞っておこうとキッチンに入った。
先ほど買ったアイスを入れようと冷凍庫を開けると、そこにはたくさんのアイスクリームが綺麗に並んでいた。
お高めのやつが買いだめしてある。
やっぱり私のためについてきてくれたんだ。
そんなこととうにわかっていたけれど、改めて彼の優しさに触れ、堰を切ったように涙が溢れ出した。
風呂場から戻った彼が、キッチンで涙する私に気づいて近づいてきた。
この家で数日間一緒に暮らして、彼の方から触れられたことは背中に手を添えられたり、肩をポンポンされたりそれぐらい。
あからさまな触れ合いはなかったが、今はじめて正面から抱きしめられた。
「よくがんばったよ。A」
「ついてきてくれて、ありがとうございました」
もう、それだけを伝えたかった。
「ううん。ぜんぜん」
そして彼もそう一言、返すだけだった。
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
