48 ページ49
＊
さっきまで泣きそうになってたのに、一気にそれどころではなくなって、こんな状況相当にやばい！！と変な汗が出てきた。
マスクもメガネも帽子もかぶってるけどバレたらどうするの！！いや、すでに亮輔にはバレてるよね…
大切なものはたぶん全部バッグに詰めたはず。
何か忘れてたとしても必要になったら買えばいいや。
それより早く立ち去らないと。
「あ、では、お邪魔しました。末長くお幸せに…」
略奪してきた女と目が合ったので
「おからだ、お大事に」
たどたどしく言い置いて、2人に背を向けた。
「A。帰ろ？」
中島さんは私の手を引き玄関まで連れて行く。
呆然としていた亮輔が、はっと我に返り私たちを追いかけてきた。
「おい！」
「なにか？」
さっきまでの私に対する甘さはもうどこにもない。
背筋が冷たくなるような声だった。
「Aと、ずっと前から付き合ってたんですか？」
今まで聞いたことないような笑い方、中島さんがくつくつ喉の奥で笑う。
「付き合ってるわけないでしょう。あなたじゃないんだから」
浮気をしたことを暗に責められた亮輔が押し黙った。
「でも特別な感情は持ってますよ。俺の方は、ですけど。
じゃ、失礼します。お幸せに」
私の方に振り向いて
「ごめん、おまたせ」
そう言って手を握り直して玄関を出た。
扉の外ですぐさま私の方から手を振り解く。
「こんな危険なこと…」
「なんで？別に危険じゃないから。
はやく帰ろ。ほら荷物ちょうだい」
「大丈夫ですから」
「俺が来た意味ねーじゃん」
と私の手からバッグを奪ってしまう。
「ほんとに、すみません。それで大丈夫なんでしょうか…？」
早足で車に向かいながら尋ねる。
「大丈夫だって。写真撮られたわけじゃないから心配しなくていい」
荷物を車に押し込み、私たちも乗り込んだ。
「でも週刊誌に垂れ込んだりしたら」
「なんて？中島健人が家に入ってきて女性を連れて出ていったって？証拠もないのに？いくらゴシップ大好きな週刊記者でもそんな三文記事書けないでしょ。
でもごめんね。我慢できなくて、ちょっと言い返しちゃった」
ううん、と首を振る。
「普段は怒りのコントロールはできるんだけど。
きみを悲しませた男だと思ったら、いつの間にか口が…やばいね、俺」
「いえ…巻き込んですみません」
「俺が勝手に飛び込んでいったからさ」
と苦笑している。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
