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そう、あの「別れてくれ」の後しばらくして、なんと浮気相手が家にやって来たのだ。
急な敵の登場に悲しむ暇なく怒りが湧いてきた。
図々しい女に対しても、言わなきゃならないことをズルズルと先延ばしにしたこの目の前のだらしない男に対しても。
そして私が家を追い出されるなんてぜったい馬鹿げているが、亮輔の言い分を聞いて呆れた。
「彼女、妊婦だからさ。ストレスかけたくないから今夜のところはどこかで泊まってきて欲しい」
だと。
「はぁ？今夜のところって何？
じゃあ明日になったらこの人はちゃんとご自身の家に帰ってくれるわけ？この人、すごい荷物持ってきてますけど」
私が彼女の大きな荷物を顎でしゃくる。
「いや、それは…」
彼氏は口ごもる。
浮気相手の女はその隣で俯いていたが、そっと彼氏を見上げて
「亮くん、私そろそろ実家から出ないと、いつまで家にいるんだって親に怪しまれちゃう」
弱々しくそんなことを主張した。
っはー！亮くん呼びですかそーですか！
私は怒りで震えて立っているのもままならない。
悲劇のヒロインみたいな顔してるけど、悲劇起きてるの、私なんですけど！
私は自分の部屋から一番大きなキャリーケースを引っ張り出してきて着替えと貴重品、もろもろ必要なものを詰め込んで立ち上がった。
「あの、ほんとにすみません」
やってることは厚顔なくせに蚊の鳴くような声でしおらしくすみません、と言うが、実際悪いことしたなんて思ってないであろう女の謝罪を無視して玄関の扉に手をかける。
「A…本当に悪いと思ってる。またゆっくり話そう」
「話すってなにを？ほんと…さいてー…」
その言葉を最後に、家の扉をガチャン！とわざと音を立てて出てきたのだった。
という出来事をかいつまんで、多少オブラートに包んで話した。
「こんなに長く付き合ってきたのに、私の存在が浮気相手のストレスになるからって言われたのもかなり頭にはくるんですけど、でももうどうしようもなくて。
それで家を飛び出してしまったんです」
「…………辛かったね」
その言葉に、私ほんとに辛い目に遭ったんだ、と実感した。
「はい…」
中島さんの優しい声に思わず泣きそうになったけど、幸い涙がこぼれることはなかった。
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
