29 ページ30
＊
「言ったよね？話聞くことはできるって。
ここは俺の家で他に誰もいない。ゆっくり聞いてあげられるよ。
今日会った時から元気ないなとは思ってたから心配してるんだ。ほら、友人として」
「友人…？」
「そ。この前のあの夜はさ、青木さんの希望を叶えるように男友達になったけど、俺は青木さんのことはもともと友人だと思ってたよ。
花屋のおしゃべりする店員さん。あとレトロ喫茶店仲間ね」
私の緊張を解くように言って、カップに手を伸ばす。
そんな彼のこちらを気遣う様子に意を決して私は口を開いた。
「…彼、結婚するって」
ふーふーしながらお茶を飲んでいた彼の視線がカップ越しに私に向けられた。
「え、おめでとう。よかったじゃん」
喧嘩話と構えてたのにめでたい話じゃん、というような感じで目をぱちくりしている。
「なのになんでこんな家出することになってんの？
喧嘩勃発って、あれか。マリッジブルーとか？」
「彼の結婚相手、私じゃないんです」
「……は？」
彼の返事が一拍遅れていた。
意味を理解するのに時間を要したようだ。
「彼、浮気してたんですよね。
それで、浮気相手の人妊娠させたらしくて…」
「…………それで？」
すごい静かな声だった。
こういう不誠実なことはすごく許せないたちなのか、私のことなのにとても怒っているのが先を促す相槌から伝わってくる。
「それで…別れてほしいって言われて…
その人と結婚…するらしくて、私は家を出てきたんです。
だから喧嘩して仲直りとか、そんな話じゃないんです」
「は、なにそれ。青木さんはそれでいいの？」
「いいもなにも…その浮気相手の人は子供は産むって決めてるから彼も責任を取らないといけない状態で」
「それはそれとして、なんで青木さんが今家を追い出されてんの？
せめてもう少しゆっくり引越しの準備するとかさ？」
「それは…彼、ずっと前から言うタイミングをうかがっていたらしいんですけど、なかなか切り出せなかったみたいで。それで浮気相手が
「はぁ？？」
中島さんの大きな声が響いた。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
