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入り口に背を向けて座っているので、中島さんが店を出たのかはわからない。
もうお会計も済ませて行ってしまったかな？とレジの方を振り返ると、彼はまだ店内にいてマスターとレジカウンターを挟んで何やら話していた。
私が見ていることに気づき、バイバイと手を振ってくる。
わ、やばい、見てるの気づかれちゃった…
気まずくなって私は会釈を返し、椅子に座り直した。
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ここラストオーダー、何時だっけ？
そろそろ次に行くところ考えないといけないのに…
「まもなく閉めますよ」
遠慮がちにマスターが声をかけてきた。
「あ…すみません」
「時間いっぱいまではいてもらっていいのでね」
マスターは優しくそう言ってくれる。
でも閉店の後はどこかへ行かなきゃ…
なんでこんなことになったんだろう。
答えの出ない問いが頭の中でずっと回り続けている。
「亮輔くんとケンカでもしたのかい？」
マスターが心配そうに聞く。
「え…？どうしてですか？」
「ふたりはよく一緒に出掛けていたように見えたからね。
こんな夜にAちゃんがひとりでいるのが違和感があってね」
マスターにならいいか、ちょっと話しちゃっても。
「実は、そうなんです。それで今日はちょっと家に帰れなくて…」
さすがに破局して路頭に迷っているなんて心配させることは言えないから、喧嘩をしたことにした。
「そうだったのかい。
そういうこともあるさ。長い付き合いなら。
また明日仲直りしたらいい」
「そうですね」
明日もその先も仲直りなんてありえないのに…
あと少しで閉店だ。
近くのネカフェか24時間営業のファミレスかビジネスホテルか、とりあえず移動できそうなところを探そうとスマホで検索しようとしたとき、しんとした店内にドアベルの音が響いた。
そのベルを鳴らしたお客の足音が近づいてきて私の席の隣でぴたりと止まる。
不審に思い顔を上げると、そこにいたのはなんと中島さんだった。
「え？中、島さん？」
先ほどとは服装が違う。
上下スウェットにキャップというラフな装い。
一度家に帰ったのだろうか。
「なんでここに？ランニングですか？」
「は？ランニング？」
「運動してるような格好なので」
「何言ってんの、これ部屋着」
「部屋、着…？」
「そう。俺の家すぐそこなんだよね。
マスターから連絡受けて青木さんのこと迎えにきた。
さ、帰ろう」
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
