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亮輔との毎日は刺激はないけどとても落ち着ける。
先日のようなたまにある彼の遊びや飲み会を我慢すれば、その他の点においては不満はない。
今更別れて仕事を探して、別の人と恋愛をするなんて、その方が私にとっては想像できないことだった。
彼もきっと私といるのがいいと思っているからこんなに長く一緒にいるんだろうし。
だからこの日常が変わることは絶対ないと、思っていた。
でも人生に絶対というものは、ない。
「もうすぐ付き合って8年記念じゃない？ご飯どこかに食べに行く？」
夜ご飯のあとお茶をいれながら聞いてみた。
「亮輔？聞いてる？」
テーブルに座っていて私の声は届いているはずなのに返事がない。
キッチンから出て亮輔の前に行くと、あまりにも深刻な顔して座っていたので心配になった。
「どうしたの？怖い顔して」
亮輔はガタガタと椅子から立ち上がりいきなり深々と頭を下げてきた。
「A、ごめん。俺と別れてくれ」
「えぇ？何言ってるの？」
思わず笑ってしまった。
「なんの冗談？」
「冗談じゃない。ほんとにごめん…
好きな子ができた」
あまりにも信じられないことが起きて涙も出てこない。というか、現実味がない。
別れ話をされたという実感すら湧いてこなかった。
しかし今私はスーツケースを持ってひとり夜道を歩いている。
自分の職場の花屋の前を通り過ぎる。
夜のせいか、ゴロゴロとキャリーケースのキャスターの音がよく響いた。
歩き続けていると、お馴染みの喫茶店が見えてくる。
これから行くところも決まってない私は、ひとまずコーヒーを飲んで気持ちを落ち着けようと店の扉を開けた。
先のことはコーヒー飲みながら考えよう。
店内に入るとドアベルの音に気づいたマスターがこちらを見た。
お客が私だとわかると
「おぉ、いらっしゃい」と笑いかけてくれる。
「こんばんは…。ホットコーヒーください」
「…夜遅い便で旅行かな？」
私の大きな荷物に視線をやり尋ねる。
「…はい」
ちゃんと笑顔で返事できただろうか。
「そうかい」
マスターはそれだけ言って、お好きな席に、といつものように案内してくれた。
これから、どうしよう。
今日の泊まるところを見つけないといけないのに、そんな気力は起きない。
コーヒー飲んで家に帰ったら、やっぱあれは夢でした〜なんてことにならないかな…
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
