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「こうやって話す仲になったわけだし、何かあれば相談乗るよ」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。
結局…私と彼の問題なので」
「いかにも聞き分けいい子って感じだね。
じゃあ言い方変える。話聞くよって言った方がわかる？
ただ人に話してスッキリすることあるじゃん。
だから話したくなったらどうぞ、ってこと。
あんまりひとりで抱え込まないほうがいいんじゃない？」
「ありがとうございます。じゃあ聞いてもらいたい時はお願いしますね。喫茶店仲間ってことで」
「喫茶店仲間、それいいね。
連絡先交換しとく？」
テーブルの上で伏せられていたスマホに彼の手が伸びる。
「…えっと」
返事に
「彼氏に見つかったらやばいか」
「…はい。すみません」
「いや。じゃあここのマスターにでも伝言してよ。
そしたら俺がここに来た時に、Aが会いたいって言ってましたよ、とかマスターが教えてくれるだろうからさ」
「すごくアナログですね。でもそういうのもいいかも」
「だろ？」
ケーキの最後のひとくちを食べ終えて、壁の時計を見るとそこそこの時間になっていた。
「そろそろ出るか」
「はい」
喫茶店を出て扉の前でお礼を言った。
「今日はありがとうございました」
「いや。こちらこそ。楽しかったね」
「はい」
「また店に行くよ。
でもちゃんと彼氏くんがいる時がいいかな。
青木さんだけの時だと色々誤解されちゃうしね」
「そうですね。ふたりでお待ちしてます」
「うん。じゃ気をつけて帰ってね」
「はい。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
数時間のあの喫茶店の中だけで叶えられた夢のひとときだった。
名前呼びは本当にあの数時間だけ。
彼はきっちりその約束を守っていた。
特別な時間を作り出すプロだなと、思った。
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
