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「こんにちは」
中島健人が来店した。
もう何度も来てくれているので顔馴染みの常連さんだ。
だけど、中島さんですよね？と私は言ったことはないから、向こうは気づかれてると思っていないと思う。
そんな、ただのお客さんと店員という間柄。
「いらっしゃいませ」
「薔薇を9本買いたいんですけど」
「かしこまりました。どの色の薔薇にされますか？」
「うーん、やっぱり赤かな」
「贈り物ですか？」
「はい。それぞれ一本ずつラッピングしてもらえますか？一人一人に渡したいので。
それで、リボンの色をひとつずつ変えてほしいんですけど、そんなことできます？」
「もちろんです。色の指定はありますか？」
「9色なんですけど。赤とピンクと…っていうか、メモした方がいいですよね？書くもの貸してもらえますか？」
紙とペンを渡して、必要なリボンの色を書き出してもらった。
「太さとか同じ感じで揃えたいんですけど、ありますか？」
「大丈夫ですよ」
彼ご要望の赤い薔薇を9本選び、茎を切って長さを整えていると、その手元を見ながら
「僕も手伝いたいんですけど、だめですか？」
と尋ねられた。
「一輪だから、難しくない簡単なラッピングを教えてもらえたらなって」
「いいですよ。ちょっと待っててくださいね」
ひとりで店番をしていたので、奥で帳票の整理をしていたオーナーを呼ぶ。
「ちょっと作業するから、お客さん入ってきたら接客お願い」
中島さんにラッピングを教えるため他のお客さんの相手ができないからオーナーにその旨頼んだ。
「わかった。来店あったら呼んで」
「はーい」
中島さんの元に戻り、薔薇のラッピングを始める。
茎の先に湿らせたペーパーを当ててその上からアルミホイルで包んでみせる。
「まずはこうやって、茎の部分を包みます」
私の説明を受け、彼も見よう見まねで作業をする。
茎の処理を終えた薔薇たちを前に
「外側の包装はどうしますか？使いたい色などがあれば…」
と聞いてみる。
「色分けをリボンでしてるので、どの色にも属さないやつがいいんですけど…」
「じゃあクリアとかどうですか？」
ぺらり、と透明のセロファンを取ってきて見せる。
「いいですね！そうします」
「じゃあこれを使いますね。花をこのあたりに置いて…」
セロファンで花を巻き、持ち手の部分を輪ゴムで留めるという一連の作業を見て覚えてもらう。
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
