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「複雑に思うなら私がここで中島さんとふたりでいるのもダメでしょって話なんですけどね」
「まぁな。でも俺らは別に夜は明かさないからさ。
ただの喫茶店でのおしゃべりじゃん。
お酒が入って泊まりになるのとは少し違うよね」
「それもそうですね」
力なく笑う。
「ちょっとヤケになってて。
向こうが女友達と遊ぶなら私も別に誰と遊んでもいいじゃんって」
「それで俺と会ってんの？」
「すみません。なんだか利用するみたいなことになって…」
「いや」
「中島さんはうちのお客さんであって、私の男友達ではないのはわかってるんですけど、最近よくお話しする男性だったので思わず声をかけてしまったんです」
「そう…」
もう食器は下げられ食後のコーヒーが運ばれていた。
テーブルの脇に挿されたメニューを取りながら、
「デザート頼まない？」
と空気を変えるように聞かれる。
「そういうことで時間もあるなら甘いの食べて、少しでも幸せな気持ちになって帰ったら？」
ほら、俺の奢りだし？と最後は少しふざけた様子で付け加える。
「じゃあ…ご馳走になります」
「よし。何がいい？」
メニューを私に見せながら、目の前の彼もメニューを覗き込む。
なんとなく視線を感じて顔を上げると目が合った。
「………青木さん。下の名前、おしえてくれない？」
「え…っと…A、です」
「Aって呼んでいい？今夜のこの時間だけ」
「いいですけど…どうしてですか？」
「男友達と過ごしたかったんでしょ？
今夜の俺はあなたの男友達ってことで。
友達なら名前呼びかなと思ったんだけど。いや？」
「いやじゃないです」
小声になりながら首を振ると、はは！と軽快に笑いながら手が伸びてきて、肩をバシバシ叩かれた。
「A、緊張すんなよ。
彼氏持ちの女性を俺は恋愛対象として見ない。
だから警戒しなくて大丈夫」
「そ、そんな！
中島さんが私のことそう思ってるだなんて考えてないです！そこまで自意識過剰じゃないですよ！」
そんなおこがましい思考はないと言うが
「自意識過剰ではないと思うけどね？
Aに彼氏がいるとわかった時俺ショックだったし？」
なんて軽く返されて動揺してしまう。
「え？！」
「はは！なんてね。
やべ、俺が男友達設定って決めたのに、実は好きでしたなんて言って自分から友達の絆ぶっ壊しに行ってたわ」
あぶねーとケラケラ笑っている。
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
