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「こんにちは」
聞き馴染みのある声が背中から聞こえて振り返った。
「あ、中島さん。いらっしゃいませ」
「久しぶりだね。元気？」
確かにお久しぶりだった。
彼の優しい笑顔を見ると、トゲトゲしていた自分の心が少し穏やかになった。
「はい。元気です。お忙しかったんですか？
今日は何かお花を？」
「いや…ちょっと通りかかっただけ。
青木さんの姿が見えたから、挨拶したいなと思って」
なんとなく言いにくそうな様子だ。
なにかあったのかな？お店に来ることに罪悪感を覚えているような、そんな言い方で腑に落ちないが突っ込んだことは聞けないので
「そうだったんですね。今からお仕事ですか？」
と話を振ってみる。
「うん。仕事の合間に時間ができたから一旦家に帰ってきてた。気分転換に少し散歩して、もうすぐマネが迎えに来るから今家に戻ってるとこ」
「中島さんお散歩するんですね」
私の言葉に彼は、え、どういうこと？と笑いながら
「するよ。いつもここらへん歩いてるし。それで青木さんの店見つけたんだよね」
と教えてくれた。
「店の雰囲気が好きでさ。
今度誰かに花贈るときはここで買おうって決めてたんだ」
「そうだったんですね。中島さんのような有名人に見つけてもらえて光栄です」
「俺別にそんな大したやつじゃないって」
彼は相変わらず気さくで話しやすい雰囲気を醸していた。
その時の私は相当もやもやした気持ちを抱えていたのだろう。
よく自分からこんなお誘いができたものだとびっくりする。
「…中島さん」
「ん？どうしたの？」
言いにくそうな私の呼びかけに彼が不思議そうな顔して返事をした。
「明日の夜って帰りは遅いんですか？」
唐突な言葉に中島さんがとても戸惑っているのがわかる。
「え…明日は、そんなには…7時ぐらいかな。予定ではそんな感じ、だけど…どうして？」
「よければ夜ご飯一緒にどうですか？あの喫茶店で」
「……………いいよ。俺も青木さんとご飯いける機会があればいいなとはずっと思ってたし」
返事までかなり間があったが、ひとまずは断られなくてほっとした。
「喫茶店のこの前の席で待ち合わせでいい？」
「はい」
「じゃあ、また明日ね」
＊
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作者名：にこ
| 作成日時：2023年11月11日 20時
