依存 80% ページ35
「治ッ…治!」
暫し意識を失っていた私は、奏の声で意識を取り戻した。
頬に奏の涙が落ちてくる。
此れって人工呼吸してくれないのかなぁ？
濡れた身体に触れている奏の手が、とても暖かく感じる。
「どうしよう、私は失いたくないよ」
奏がポツリと言った。
私はこんなズルい方法でしか君を縛れないのだよ。
誰にも渡したくない私は、こんな方法でしか君を感じられないのだよ。
言葉を疑う私は、君の真意を覗きたかったのだよ。
余りにも苦しそうで、私は奏を抱き寄せた。
本当は人工呼吸をしてくれるまで起きないつもりだったのだけどね。
「治、何で入水したの？」
「君が私から離れて行きそうだったからだよ」
抱き締めていると、奏の身体がとても暖かくて安心した。
「そんな事しなくても一緒に居るよ」
キツく抱き締められ震える声が耳に残った。
「結婚してくれるのかい？」
僅かだったが、首を縦に動かした。
やっぱり君は純粋で無垢で、とても優しい。
こんなにも醜い感情で君を支配しているのに。
其れに答えようとしてくれている。
「私のお嫁さんだねぇ」
「もう、しないでね？」
私の顔を真っ直ぐに見据えて奏が言った。
この表情と、この声に一目惚れしたのだ。
人を大切にして、自分を後回しにする危うさ。
人の為に涙を流す綺麗さ。
「奏、私と結婚してくれ給え」
「ふふっ、喜んで」
水に濡れた奏が艶やかに微笑んだ。
スルリと綺麗な銀の指輪を奏の指にはめた。
「入水した後に言うなんて、治はムードも無いなぁ」
楽しそうに笑う彼女が、嬉しそうに目を細めた。
「済まないね」
「ありがと」
嬉しそうに指輪を見つめて、奏が言った。
「さて、式はもう用意してあるのだよ」
「え？何時の間に!?」
勿論、私達が出会った日に合わせたからねぇ。
「さて、探偵社に報告に行こうか」
手を繋いで探偵社に戻った。
「奏まで入水したのかっ!?」
国木田君が目を剥いて奏を凝視していた。
「国木田さん、私は助けたんですよ」
「あぁ、そうか」
「ん？奏さんと、太宰さんは」
敦君が気付いた様で私達の指を見た。
「そ、結婚するよ」
「「「えええええっ!?」」」
皆驚いて社内に悲鳴の様な叫びが轟いた。
「社長に式で出て貰いたいんですよ」
「私は首領さんを呼ぶので」
「そ、そうか和服か？」
社長、其処を気にするのですね。
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彼岸花(プロフ) - 和さん» ありがとうございます！結構中也さんて書きやすくて多めにしちゃうんですよ。是非、楽しんで読んで下さいね! (2017年3月25日 13時) (
レス) id: 81cc73b64b (このIDを非表示/違反報告)
和 - 前作も読ませていただいてました！中也のもどかしさがなんともカッコいい！！双黒万歳！！更新楽しみにしてます！ (2017年3月25日 12時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2017年3月24日 17時
