愛 22 ページ22
どうやら熱に浮かされ過ぎて分別がついてないようだ。
「主！鶴丸殿、どうかしたのですか！？」
バタバタと一期一振が走って来た。
「きみ、光坊に粥を作ってくれと頼んで来てくれ」
「わかりました！」
部屋の布団に彼女を寝かせればぼんやりとした様子で彼女は寝転がる。
「きみ、その布をとっていいかい？」
「んー？嫌」
嫌って言われてもなぁ。
「とるぞ」
取って見れば彼女の頬は赤く瞳も潤んでいる。
「あぁー…///」
手を出したらいかんしなぁ。
「鶴丸の手、冷たい」
ニコニコと彼女は俺の手を抱え込んだ。
「きみ、光坊が粥を作って来てくれるから俺の手は離してくれ」
これ以上掴まれていると何かしてしまいそうだ。
人の身体とは難しい、衝動に任せて動いてしまう。
「嫌、離れないで」
途端にうるうると涙を目に溜めて彼女は俺の手にすがる。
「きみ、寂しいのか？」
人は寂しくては死んでしまうと言うからな。
彼女は無理やり連れて来られて寂しかったのかも知れない。
「寂しくはないよ。皆がいるから」
なら、彼女の涙を止める為には何をすれば良いんだ？
あんなに強いきみが今は泣いている。
初めて泣き顔を見てどうすれば良いのか分からない。
「きみ、泣くのはやめてくれ。どうしたら泣き止んでくれる？」
「泣いてないもん」
ぽろりぽろりと涙が布団にシミを作っていく。
彼女が泣いてるだけなのに俺の胸が痛い。
「泣いてるじゃあないか」
強がりばっかり言って、困った主だ。
「鶴丸、書類取って」
この後に及んでまだ仕事する気なのか。
「駄目だ」
「何で、取ってよ」
「きみは休む事が必要だ」
「いーや！仕事があるの！」
まるで小さい子供じゃないか。
熱が出てるとこんなに幼くなるのか。
「こら、動くな」
バタバタと彼女はもがくように前に進もうとする。
「鶴丸、明日の仕事があるの」
また仕事か。
「仕事仕事って、きみは身体を壊すぞ」
無理やり連れて来られた政府の為に何で働くんだ。
「駄目、成績を挙げないと皆といられない」
「きみ、早く寝て明日は一緒に現世に行こう」
自分の事を返り見れないなんて愚かしい。
愛らしくも弱々しく手が離せない。
「うん、明日には治すから一緒に行こーね」
朗らかに笑う彼女は果たして明日、今日の事を覚えているのだろうか？
「鶴丸、鶴丸、いつもありがとね」
へにゃりと彼女は笑う。
不意打ちとは驚きだぜ。
「嗚呼///」
「ふふっ、鶴丸が赤くなってる〜」
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2019年4月21日 15時
