トリップしたいなんて言ってない！ 中

漫画の世界　87 ページ37

「行きます！あ、勝手な行動はしませんから！」

するだろう、その言い方じゃ。

「服装はスーツだが、誰でも良いが女性がいるな」

居たほうが入りやすいからな。

「じゃあ、私が…」

「駄目だ」

それなら連れて行かない、他の男に見せたくないんだ。

「じゃあ、男二人で行くんですか？」

彼女は不服そうな表情だ。

「そうしよう。それに着替えてくれ」

用意していた予備のスーツを渡す。

自分もそろそろ着替えようか。

安全な任務だから、彼女は危険な真似ができないだろう。

「零さん、対象は？」

途端に顔つきが変わるのだから彼女は恐ろしい。

「男性だ、大手企業のな」

彼女は首をひねった。

「不正でも？それとも何か違う違法行為を？」

「違法行為だ。パーティーの方でな」

シュルリとネクタイをしめようとすれば彼女がネクタイをしめてくれた。

「男二人は不利では？」

「大丈夫だ、対象を捕まえに行くだけで現場を抑える」

まぁ、パーティーに男二人だとどうかと思うがな。

そこらへんは大手企業の社長とかにでも見えるだろう。

「でも、近づくなら私が行ったほうが…」

「駄目だ。俺が現場を抑える、貴女は付き添いだ」

コンコンっとノックがして風見が入って来た。

「降谷さん、用意はして置きました」

「嗚呼、もう向かう」

物珍しそうに彼女は俺と風見を見ていた。

「夢奈さん、男装を…？」

「はい、男に見えますか？」

「え、えぇ」

「行こう」

彼女に言えば楽しそうにうなずいた。

「貴女は、本当に気を付けてくれ」

充分に綺麗なのだし目を惹くのだ、パーティー会場に入るまで何度もそう言った。

「えぇ、零さんの方が目を惹きますよね」

それだけ言い残してさっさとパーティー会場に入って行った。

会場に入れば彼女の束ねられた長い黒髪が風でうねる。

スーツ姿なのに俺には女にしか見えないな。

「お兄さん！」

早速彼女は女性に捕まっていた。

「なぁに？綺麗なお姉さん達」

男にしては高めくらいのテノールで彼女は囁いた。

あの表情は楽しんでいる顔だ。

「格好いいのね、私と踊らない？」

その誘いに彼女は首をひねった。

「ごめんね、踊りは下手なんだ」

女性達の誘いをニコニコと申し訳なさそうに断った。

まるで僕だな、安室透のようだ。

「じゃあエスコートして！」

「それくらいなら、是非」

ゆっくりと女性の腰へと彼女の手が伸びる。

気をつけてくれと言ったのに、人の話を聞かない人だ。

「夢奈さん」

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