トリップしたいなんて言ってない！ 中

漫画の世界　79 ページ29

何が面白いと言うのか彼女は楽しそうに笑っている。

「降谷さん、良いんですか？酒の量が異常ですよ！？」

風見が慌てて彼女の持っていたグラスを取り上げた。

「異常？まだそんなに飲んでないだろ？」

自分の周りを見れば瓶が数本転がっていた。

「あー風見さん、返して下さいよ」

頬を膨らませた彼女が風見の手からグラスを取り返した。

「待て、何杯飲んだ？」

「ん？数えてませんよそんなの」

バーボンを確認すればとっくに空だ。

「嘘だろ、どんだけ強いんだ。あ！ライも飲んだな！？」

良く良く見ればライも飲み干されている。

本当に彼女は高校生か？

「ふふっ、美味しかったですよ？」

直ぐに彼女の持つグラスを取れば嫌だと彼女は首を振った。

「駄目だ。もう帰るぞ、兎に角水でも飲んで」

水を渡せば大人しく飲んでくれた。

「ん、うっすい」

「水だからな」

彼女をお姫様だっこで抱き上げれば軽かった。

着物を着てるのに軽いのか、食事の量を増やさせよう。

「れーさん、れーさん、明日はお出かけしたいです」

舌足らずな声で俺を呼ぶ彼女がお願いをするのもワガママを言うのも叶えてあげたい。

「何処に行きたい？」

「資料にあった所に一件ずつ回りたいです！」

全く、そういうお願いばかりだな。

「駄目だ、出掛けたいならデートでもしないか？」

「デート？れーさんと？」

嬉しそうな顔はしないな、本当に意識されてもいないのか。

「貴女の好きな所に行こう」

「それならお出かけよりも零さんとゆっくりしたいです」

「ゆっくり…？」

「お仕事で疲れてるから休まないと働けませんよ？」

俺の為…か？本当に彼女は見返りもなしに純粋にそう思って言ってくれてるのだろう。

街灯が暗く彼女の表情が一瞬隠れた。

「お仕事、お疲れ様です」

ふわりと彼女の細い手が俺の頭を撫でた。

「嗚呼…」

彼女に思うよりハマってしまったようだ。

コツリと何かの音が耳に届いた。

ベルモット…なんで此処に居るんだ？

彼女も気付いたのかスルリと俺の手から離れた。

「では、また！」

彼女が送って貰ったかのように演技した。

確かに彼女が関わるべきじゃない。

ベルモットは何も言わずに立っており彼女の背中を見送ってベルモットに話し掛ける。

「何か用ですか？」

「随分と彼女の事を気に入ってるのね」

キッとベルモットを睨み付ける。

「要件はなんです？」

「ジンが中居という女を探せって言ってたのよ、そういうの貴方得意でしょ？」

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