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漫画の世界 3 ページ3

「すみません、忘れてましたね。何度も有り難うございます」

今度こそ、とペコリと頭を下げて携帯をひったくり逃げる。

だが、この男がそれを何度も許す筈もなかった。

「貴女はそんなに僕に名前を教えたくないんですか?」

「あはは、嫌ですね、そんな筈ないですよ!」

白々しくも私は笑う。

彼の笑顔が一層濃くなる。

「なら、教えて頂けますか?」

「いや、無理ですね。もう会う事のない人に名前を教えたらいけないって小さい頃習いました」

真剣な面持ちで言うと安室さんはキョトンっと固まった。

「明日また会ってくれませんか?」

何故そうなった、本当に勘弁してくれ。

「無理です、知らない人にはついて行くなって小さい頃言われたんです」

この小さい頃って便利だな。

異様な返答しづらさがある。

「僕の事知ってますよね?友人から聞いたんじゃなかったんですか?」

あー、口では勝てないのかも知れない。

「友人は知ってても私には知らない人なので…」

「なるほど、貴女は親切に携帯を拾った人間に対して知らない人と言い逃げようとするんですか」

ガンッと壁に彼の手がついた。

距離が近くなり俗に言う壁ドンの姿勢になる。

「すみませんでした…」

もう謝るしかない。

それ以外に何をすれば良いかも分からない。

「貴女の家は?送って行きますよ」

え、ちょう怖い。

何か発振器とかつけられてるかも…後で袖とか確認しよう。

そういえば、トリップした私は何処に住めば良いんだろう?

「家は引っ越して来たばかりでまだ借りてないんですよ」

野宿か野宿しか道はないな。

お金の方もバイトをしないといけない。

帰る方法も探さないといけないじゃないが、帰らなくても楽しそうだから此処で生活しても良いかも知れない。

「良い所を知ってますよ」

「本当ですか!?」

一本の垂らされた糸に私は縋り付くしかない。

「え…良いんですか?」

「勿論!是非教えて欲しいです!」

野宿なんてしたくないだろう、仮にも此処は一応漫画の世界だ。

何が起こっても不思議じゃない。

それなら、安心できる誘いにのる方が良い。

「じゃあ、案内しますね」

パッと彼が離れた。

壁ドンの姿勢で会話してたのか私達は。

案内されるまま彼に付いて行けば車に乗せられる。

うーん、車に乗ったのは良いが高そうな車だな。

なんて思いながら運転席の彼を見れば、なるほど確かにイケメンだ。

友人が騒ぐのも無理はない。

ジッと見惚れていると車が止まった。

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彼岸花(プロフ) - れんさん» ありがとうございます(*^^*) (2019年9月20日 20時) (レス) id: faf1357482 (このIDを非表示/違反報告)
れん - 面白い☆彡 (2019年9月20日 17時) (レス) id: 24330c091d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彼岸花 | 作成日時:2018年10月11日 0時

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