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漫画の世界 1 ページ1

「あのー、携帯を拾って頂き有り難うございます」

おずおずと礼を言えば彼はますます笑みを深めた。

「いえ、お怪我はありませんか?」

「ないです、本当に有り難うございます!」

早々に立ち上がろうとすれば彼は私の手を掴んだ。

「珈琲でも飲んで行きませんか?」

断れば角が立つだろうし、断ろうにも断れない。

「お言葉に甘えさせて頂きます」

ちらりとお気に入りの時計に視線を寄せる。

嗚呼、確かに時間通りに進んでいる。

可笑しいのは私だけ異次元にいるということだ。

私は只名探偵コナンの本を久し振りに読もうかな〜なんて思って開いただけなのだ。

あの時の自分を殴ってやりたい。

それから携帯を触ったと思ったら光に包まれ此処にいた。

携帯のゴトンっという音で私は冷静になったのだが…。

携帯の拾い主が安室さんでなければもっと冷静になれた。

私は彼が愛想よく拾ってくれた携帯を取らずに一度逃げ出したのだ。

彼は不審に思っただろう。

逃げ去った時に彼の顔は真っ赤に染まっていた。

怒ったのだろうか?

それとも夕陽のせいか?

その彼が瞬く間に追い付いて私の肩を掴んで此処へと連れて来たのだ。

「お急ぎなんですか?」

思考していると安室さんの声が上から降ってくる。

「あ、いえ!その、マニキュアが!剥げちゃったなって思ったんです!」

自分の手を見つめてこれしかないと言い訳する。

少し欠けた赤いマニキュアを珍しそうに安室さんは見た。

「嗚呼、せっかく綺麗に塗れているのに勿体無いですね」

するりと私の指を彼の手が掴んだ。

確かに彼はスキンシップが激しいな。

「残念だけどまた塗り直しますよ」

サッと彼の手の中から指を抜き取り微笑む。

やめてくれ、本当に安室さんのファンに恨まれたくない…。

「次は青とかはどうですか?」

「青ですか?嗚呼、私が一番好きな色なんです」

どうして彼は私が好きな色が分かったんだろう?

違うか、ただオススメされたのか。

「貴女には青が似合いますよ」

そうだろうか?

貴方の方が合いそうだ。

するりと彼の髪を掻き分けて瞳を覗き込む。

「安室さんの瞳の色、綺麗ですね。私の好きな感じの色で…」

あれ?やばい、やばい…。

余計な事を口走った。

彼はキョトンっとこちらを見ていた。

あ、失敗した、これは私死ぬんじゃないかな?

「僕の瞳の色、好きですか?」

彼の綺麗な瞳がキラリと鋭さを増した。

漫画の世界 2→



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彼岸花(プロフ) - れんさん» ありがとうございます(*^^*) (2019年9月20日 20時) (レス) id: faf1357482 (このIDを非表示/違反報告)
れん - 面白い☆彡 (2019年9月20日 17時) (レス) id: 24330c091d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彼岸花 | 作成日時:2018年10月11日 0時

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