第四十話 ページ42
*
理事長とエドワードの格闘している中。
クロエはゼノの服を掴んでいた。
「あらゼノ。丁度いいわ、私貴方にちょっと用があるのよ」
目は笑っていないが、笑顔を浮かべている。
そんなクロエを見て、バツが悪そうにゼノはタラタラと冷や汗を流していた。
「あ、あはは〜…やばい!パートナーの子来ちゃう!!」
「大丈夫よ、そんなに時間は取らないもの。直ぐに終わらせるわ」
そう笑って言い放った刹那。
ゼノの右足を、クロエはヒールの先で思いっきり踏み付けた。
そして、云を言わさぬスピードで可憐にくるりと回り左足の脛に回し蹴りを食らわせる。
回った時に、ドレスの裾がひらりと舞った。
案の定、クロエから容赦ない攻撃を食らったゼノの両足は、呆気なく膝から崩れ落ちていく。
その時間、僅か1分弱だ。
その前に凛とした姿で立っているクロエは、最後に一言。
「ふふ、直ぐに終わるって言ったでしょう?」
なんて言って微笑みを浮かべて踵を返し、エドワード達の元へと戻っていった。
彼女が戻った時は、理事長に
そしてふと、ある事に気付いた。
「貴方、手から血が出てるじゃない」
両手から、微かにだが血が出ていた。
そっと彼の手を取って、持っていたハンカチで傷口の血を拭えばハンカチが汚れると気にする彼に「いいのよ」とだけ短く返事をする。
両手の血を拭い終え、そっとハンカチを仕舞った。
すると、口を開いたのは彼でなく理事長で「クロエ嬢にも優しい所があるのう」なんてにやけ顔で言ってくる。
「私に良心というものが無いのなら、あんないい加減+突然すぎる場面でピアノなんて弾かないわよ」
「なんじゃ、まだその事を言っておるのか?ねちっこいのぅ」
と、また言い合いが始まりそうになった時。
心底楽しそうに笑っている理事長に言葉で勝てない事などこれまでの経験が教えてくれた。
クロエは呆れたように溜め息を零し、エドワードはそんなやり取りをやや呆れ気味で見つめてくれている。
それからしばらくして、理事長は「クロエ嬢もエドワードも、仲良くするのじゃぞ」と母親みたいな台詞を残してやっと去っていった。
理事長がいなくなったと同時に、2人揃って安堵の溜め息を零す。
ハモった事に驚いてお互いを見詰めた。
そしてふっと、互いに小さく笑みを零す。
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