第三十三話 ページ35
【貴方、別に格好つけなくても格好良いと思うわよ?】
なんだ、案外男をその気にさせる
そんなこんなで色々指導してもらい、なんとか合わせられるくらには踊ることができた。
人間やればできるもんだな。
・・・俺は吸血鬼だが。
「さて、それじゃあすっかり遅くなったし帰るか。」
俺がそういって出ようとすると
「・・・ええ」
と少し赤い顔で彼女はか細い声で答えた。
少し気になったので、俺は彼女の近くによりデコに手を当てる。
ちょっと熱いんじゃないか？
そう思ったとたんに彼女がいきなりぶっ倒れた。
「マジか・・・」
さて困った、こんな時間に彼女の女子寮にいったら変態扱いされるかもしれない。
しかも彼女の寮の場所が俺には全くわからない。
「取り敢えず理事長室にでもいくかね。」
そう考えて、俺は理事長室に赴くことにした。
因みにその時の抱え方は姫抱っこだったのだが気絶している彼女がそれを知ることはない。
移動後
「おい居るか！」
とドアを蹴飛ばして入ると
「もうちょっとマシに入らんか！」
とアイアンヘッドをくらった。
「人抱えてるんだよ！わかれ！」
というと解放してもらった。
取り敢えず彼女をソファーに寝かしておく。
「・・・エドワード、もしやお主・・・ヤったのか？」
「阿呆か！」
「ダンスの練習が終わって色々あってぶっ倒れて、俺は彼女の寮がわからないから、あんたに運んでもらおうと思ったんだよ。」
理事長は口を尖らせて
「面倒じゃ。主が行け。」
「俺を変態にするつもりかあんたは！」
とまた突っ込んだ。
しばらく茶番が続いた後、理事長が真剣な顔で
「エドワード、お主も契約をする気にはならんか？」
俺は即座に「無い。」といってやる。
「俺では守りきれる気がしない。」
と少しだけ笑いながら言葉を紡ぐ。
「俺は守るじゃなくて、壊すことしかできないからな。」
目を閉じたままの彼女を見る。
「こんな優しい人はちゃんとした幸せと一生をおくるべきだと俺は思ってるんだ。」
例え、押し付けに過ぎないとしても、俺は彼女にそういう人生をおくって欲しいと思った。
「悪い、暗くなった。明日交流会だからもう帰る。お休み理事長。」
そうして俺は理事長室を後にした。
背中にある確かな重みを噛み締めながら。
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