第十四話 ページ16
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「疲れた…。」
と、誰にも聞こえないぐらいのトーンで無意識に呟かれた言葉。
やっと授業が終わり、今は休み時間である。
授業中に、周りからのチラチラとした視線は感じたが、それがどう言った感情の視線かまでは分からなかった。
人に見られると言うのはこんなにも疲れるものなのか。
いつもより気を張っていたせいで疲労感が半端ない。
あの本読んでるのかな?
なんて思ってチラリと彼の様子を伺えば、そこに彼の姿はなかった。
どうしたのだろとは思ったが、別にそこまで親しい訳でもないのに、彼の行動をいちいち知るという事も気が引ける
視線を戻そうとしたその時。
背後から声が聞こえビクッと肩を揺らして驚いた。
そこには、先程授業をしていた教科担の女の先生。
どうやらこの前集めたプリントを職員室に取りに来てほしいとの事で、内心めんどくさいとは思ったものの、そんな事は言わずに「分かりました」と頷いた。
教室を出てから職員室に向かっている最中。
近道をしようと空き教室が続く人気のない廊下を歩いていた。
「……___!」
「!!ーーー?」
耳に聞こえてきた微かな声。
普通の話し声とは違い、若干声を荒らげている様にも感じた。
普段はそんな状況にでくわせば、巻き込まれないように遠ざけて来たものの微かな胸騒ぎを感じ、自然と足が声のする方へと向かったのだ。
そして、廊下のとある一角。
元々この廊下は一通りが少ないのだが、近くに非常階段があり死角になっている。
遠目から見て数人の男子がいるのはわかったが、顔までは分からなかった。
雰囲気からして楽しくお喋り。という感じではないのは鈍感だと言われている彼女でも流石にわかる程で。
1歩、もう1歩と近づいたその時。
その集団の中にあの本の彼がいる事に気付き、びっくりした。
どういう経路でこんな事になっているのかも、ましてや何を話しているのかも分からなかったが彼を視界に捉えた瞬間。
パッと足が動いていて、それと同時に声が出ていた。
「貴方達、こんな所で何をしているの。」
彼女の凛とした声が廊下に微かに響き、男子達の視線が一斉にこちらに向けられる。
けれど、不思議とその時は恥ずかしさを感じなかった。
それに何故自分が普段は取らないような行動を取ったのかも分からなかったのだが…____。
それはきっと、彼がどこか困っているような表情を浮かべていたからなのかもしれない。
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