其の14 光と闇の子 1 ページ15
カツカツと俺のブーツの音だけが妙に響く、薄暗い地下牢の中を俺は歩いていた。
俺に遭ってもらいたい子、とは一体……
首領は何を考えてんだか。
ふと、と或る牢の前で足を止めた。
『やァ、初めまして』
俺はにっこり笑い、奥に居る誰かに話し掛けた。
「……貴方は、誰?」
奥から小さく、警戒心を滲ませた声が返ってきた。声からして女の子だろう。
俺はゆっくり答えた。
『俺はね、A。只のA。苗字はないよ。君は、なんていうの?』
「……私は」
俺は牢に近付きしゃがみ込んだ。
『ねぇ、もー少し近付いて来れない?俺、君の顔がみたい』
ダメかなぁ、と笑ってみせる。
奥の子は暫く黙っていたが、何か決めたように立ち上がり、俺の処まで来た。
其の子は、赤い着物が善く似合う可愛らしい女の子だった。首から兎のストラップを付けた、携帯電話を下げている。
鏡「私の名前は鏡花。昔、孤児だった。好きなものは兎と豆腐。嫌いなものは犬と雷。此処に拾われて、6ヶ月で35人殺した」
少女は目に光が無く、俺を見上げ淡々と云った。
そうか、この子が鏡花……
最近、姐さんが可愛がっていると聞いていた子。そして、35人殺し。
『……ねえ、きょーか』
鏡「何?」
俺は淡々と、なんでもない事のように問うた。
『35人殺しってそれ凄いの?』
少女はキョトンとしている。
鏡「……えっと」
きょーかは滅茶苦茶戸惑っていた。
『実はねー、俺も昔孤児でね此処に拾われたんだけど、俺最近まで此処から外へ出たことなくて』
立ち上がり、腰を伸ばす。
『マフィアとしての仕事はもう数えらんない位にこなしてたけど、俺は35人殺しって多いのか、少ないのか、凄いのか解んねえや』
たははー、と笑う。
鏡「……そう、なの」
『でも君、其の様子だと、自分の望みを云った事無いね?』
きょーかは俺を只、見上げた。
『きょーか、君の望み、当ててあげようか?』
俺、こう見えて人の心読むのは得意。
兄ちゃんが此処に来たということは、きょーかに仕事を頼んだという事。其の仕事というのは、現在遂行中の人虎の捕獲。
多分兄ちゃんはそれをきょーかに手伝わせる気だ。
『仕事、厭なんでしょ?』
きょーかは大きく目を見開いた。
鏡「……如何して」
解るの、と云いた気な顔。
『解るさ、こう見えて俺、人の心読むのは得意なんだ。其れに』
君は光を求めている顔をしているから、ね。
……成程。
だから首領はああ云ったのか。
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衣紋(プロフ) - 有栖さん» お読みいただきありがとうございます!!後々にわかりますので楽しみにしていてください! (2018年4月6日 19時) (レス) id: d3938a972f (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - 過去に何があったのかが、気になります (2018年4月4日 17時) (レス) id: e7a3c43521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衣紋 | 作成日時:2018年2月1日 21時