【H×H】マドンナリリーの花を君に贈る。２ (ページ10)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:14,247 hit

50 ページ10

．

「…マチ。」

「なに？」

夜明けの深夜の狭間。

廃墟と化した教会のような場所。

静かに張り詰める空気の中、私はいつもと変わらない態度で問いかけた。

「…団長さんだけって言う話じゃなかったっけ？」

「コイツらいつもだったらすぐ散らばるのに、団長に来客があるって言ったら誰もどこもいかないのよ。」

「そうなんだ。もしかして私と面識ある人っていたかな…。」

各々自由に立ったり座ったりしている幻影旅団の方々を眺める。

皆、観察するように、あるいは監視するようにこちらをみていた。

が、例によって完全に覚えがない。

「ダメだね、マチしか覚えてないや。」

「ふふ、団長は？用があるのに覚えてないの？」

「…マチが教えてくれるだろう？」

この間の通話時の時のように上機嫌に笑うマチ。

緊迫した空気が2人の間だけは穏やかで、まるで別空間のようだ。

「酷いなぁ♠︎僕は覚えてるのに無視しなくたっていいだろう？」

「…こういう事をしてくるからわざと無視してるんだよ。そこの所わかってる？」

わざわざ気配を殺して私の背後に降り立ったのはヒソカだった。

マチと向き合っていた私を無理やり向き合うようにして抱き寄せる。

背後に回った手が上着の中に入り込み、その指先がいやらしく腰を撫でた。

「痛いよ、マチ♦︎」

「その不埒な手を離しな。Aはアタシの客だ。」

「…ハイハイ。」

恐らく彼女が牽制してくれたらしい。

驚くほどにすんなりと引いたヒソカは、興奮のチラつく瞳をマチに向けていた。

「残念、また今度❤︎」

ちっとも残念じゃなさそうにそう言った彼は、一度席を外すらしい。

暗闇に消えていった彼を見送れば、フッと空気が緩むのを感じた。

…なるほど、余所者の私を警戒していただけじゃなく、ヒソカの事も警戒していたのか。

「ったく、アンタも少しは抵抗しなよ。」

「ありがとう、マチ。彼は大袈裟に反応すると喜ぶからね、基本的に騒がないようにしてるんだ。」

「…そう。じゃ団長に渡すもの渡してご飯行きましょ。ディナーって時間じゃないけど。」

それもそうだ。もうすぐモーニングが始まる頃だろう。

大人しくマチの後に続けば、団長と思われる男の前で止まる。

黒い髪をオールバックにした、黒い目の青年だ。恐らくイル兄や私と歳が近い。

「…キミに会うのは、5度目だ。」

パタン、と読んでいた本を閉じて目線をこちらに向ける彼。

私はその言葉に内心首を傾げていた。