四十九柱 ページ49
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「それで、霊力が少ないんじゃないかっていう僕の疑問は解決されてないんだけど？」
燭台切 光忠様の声に、思考を引き戻す。
少ないのか、と聞かれてyesともnoとも答えられるほどの情報を持っていない私は、答えを求めるように三日月様に視線を移す。
「燭台切よ。昨日からこの母屋、淀みが…前の人間の霊力が薄くなったと感じぬか？」
三日月様が言うには、本丸というのは審神者の霊力を吸って生きているので、どこを歩いていても審神者の霊力を感じるらしいのだ。
審神者が変わった時点で前の人間の霊力は、刀剣男士様にしたら違和感を覚えるものなのだという。
特に刀剣男士様方が受け入れ難かった人間のものは、言うなれば酷く『臭う』のだとか。
三日月様の言葉に、彼はハッと息を飲む。
そして、黄金色の瞳を辺りに彷徨わせ、何度か頷いた。
「言われてみれば…！前はどこにいても吐き気がしていたのに…」
「昨日、主は霊力を母屋へ喰らわせてな。大分前の人間の瘴気が浄化されたはずだ」
「いくら注いだら1日でこんなに…」
「はっはっは。量、質、共に先代に負けぬと俺は見た」
幼子を宥めるかのように後頭部を撫でられた…徐々に離れていたのがバレたのか。
三日月様が顔を覗き込む仕草をするので、努めて表情を削ぎ落とした。
瞳の中でゆらりと妖しく揺れる三日月が無表情な私を写す。
「うむ。もう顔色も良さそうだ」
こくり、と頷いた三日月様の膝の上からゆっくりと退く。
視界は少し揺れていたが、頭痛と目眩は随分と鳴りを潜めていた。
もう少しなら出来るだろうかと再び座布団の上に正座をする。
「では、燭台切 光忠様の続きを、」
私の言葉に虚を突かれたとでもいう風に目を丸くした燭台切 光忠様。
彼は、それから一拍置いて深くため息を吐く。
「…明日でいいから。弱ってる女の子に無理を強いるなんてカッコ悪いしね」
「ああ、そうした方がいいだろうな。さ、主よ」
苦笑、とも見える表情を浮かべた彼に、内心少し驚いた。
三日月様に背を軽く押され、ゆっくりと立ち上がる。
「…申し訳ございません、また…明日にでも」
「……気にしないで」
手入れ部屋を出る際に、深く一礼をした。
「流石だな。今日１日で３振りも口説き落とすとは」
はっはっは、と笑う三日月様は、離れに戻る道のりでそう言った。
「…そんな畏れ多いことをした覚えはございません」
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
