四十六柱 ページ46
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「よろしく頼むよ」
乱 藤四郎様と入れ違いで入ってきたのは、にっかり 青江様だった。
彼は柔らかく微笑んで、座布団に腰を下ろす。
「これは…誉桜だね」
「誉桜…」
「僕達刀剣男士は良い方に感情が高ぶると桜が舞うんだ。それがコレ、誉桜」
綺麗なものだろう、という彼の言葉に床に舞った花びらを見る。
膝の上に落ちているものに触れれば、しっかりと花びらの感触があった。
それでも、透明で向こうが透けるので、少し不思議だ。
「あ、」
「ああ。コレは時間が経つと消えてしまうからね、お掃除いらずさ」
「…そう、なんですか。少し、勿体無い気がしますね…」
スゥ…と指先の桜が消える。
それと同時に、周りにあったもの達も消えてしまった。
「じゃあ、手入をお願いしようかな」
「はい。お待たせしてしまい、申し訳ありません」
先ほどの刀、短刀よりも丈のある脇差。
重みを感じながらゆっくりと引き抜いたそれは、乱 藤四郎様に負けず劣らず傷だらけだった。
鞘を刀置台に置き、拭い紙を手に持つ。
二度目ともなれば、先ほどよりもまともな手つきだ。
慎重に、丁寧にと自分に言い聞かせながら手入れを続ける。
途中、微かに驚くような声が聞こえてきたが、それに反応できるほどの余裕がなかった。
「…終わり、ました」
キン、と鞘に納め、刀置台へ。
懐紙を唇から外した瞬間、どっと疲れが押し寄せた。
短刀の比じゃないほどに脇差は疲れるのだと、ぼんやりと思う。
「こ、れは…キミ、大丈夫なのかい？」
「…は、はい。体に異常は無いと思いますが」
真剣な眼差しを向けられ、戸惑う。
彼は自分自身を手に取り、鞘から抜く。
そして隅々までジッと見つめ、一つ深い息を吐いた。
「もっと荒く扱うと良い。コレではキミが疲れてしまうからね…」
「ですが、」
「まだふた振り…しかも片方は短刀だからそのくらいで済んでいるけれど。これから燭台切くんもするんだろう？とてもじゃないけど、霊力が保たないだろうね」
金色の左目が、真っ直ぐと私を射抜く。
私は、それから逃げぬように目を合わせ、口を開いた。
「出来ません。いくら霊力が保たなくとも、私は貴方様方を粗雑に扱うことは出来ません。これが、私が貴方様方に触れられる…精一杯でございます」
「…そう。じゃあ僕はもう何も言わないよ……がんばってね」
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
