二十七柱 ページ27
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障子の方から、つまり外から日が差し込んでいるので、室内には障子の奥にいる方の影が写っている。
とりあえず、刺激することのないように膝を折って座った。
その少しの動作にもビクリと震えるので、やはり人間を恐れている感情は持ち合わせているようだ。
長い沈黙が続く。
こちらから声をかけて良いものなのかと考える。
「…こんのすけには、言わないで」
掠れたような声が聞こえた。
一拍遅れてではあるが、了承の意を伝えれば障子越しでもホッとしたような気配がうかがえた。
恐らく、この影の持ち主はずっと私を母屋から見ていた乱 藤四郎様だろう。
「こんのすけを待たせております故、戻らなくてはアレがこちらに来るかもしれません」
「…そっか…また、きても…いい？」
「ご随意に。失礼を承知ながら申し上げますと、明日の午後ならばこんのすけは政府へと行きますのでその時間帯を狙ってお越しいただければ確実かと」
「うん…！わかった」
「では、私はこれにて失礼致します。この部屋にはしばらく戻らないように致しますので、お好きなようにご利用くださいませ」
正座をしたまま、頭を下げて、なるべくゆっくりと部屋を出る。
そして急いで掃除用具を持って鍛刀部屋に戻った。
「何かあったのですか？遅かったように思いますが…」
「ああ、ごめんね。夕飯の材料を確認してて」
「こんのすけはお揚げがあれば満足です！」
「…コンはね」
今日ほど、いつも無表情であることに感謝した日はなかった。
ヒヤリと背中は冷たくなったが、コンは訝しんでいないようだし。
「あれ、この札は…？」
「こちらはあとどれ程で担当が完成するかでございます」
「…へぇ、そんな便利なものがあるんだね」
1と書かれた木製の掛札の横には『02:30』の掛札。
2と書かれた木製の掛札の横には『00:20』の掛札。
どうやら一つは2時間30分、もう一つは20分で鍛刀できるらしい。
20分の方の鍛刀が終わる前に掃除を済まし、それを顕現しようとコンに提案された。
特に異論はないために、黙々と掃除の手を動かす。
…乱 藤四郎様は何を思ってコンに知らせるなとおっしゃったのか。
コンは、本当に刀剣男士の味方なのか。
「…色々、調べなくてはならないみたいだな」
「はい？何かおっしゃられましたか？」
「いや、初めて刀剣男士にちゃんと会うから心の準備をね」
しばらくは、様子見か。
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2019年4月10日 21時
