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三十七柱 ページ37




「動じぬな、人の子。殺されぬとでも思っておるのか?」


口角を釣り上げ、薄ら寒い笑みを浮かべる彼。

その声と同時に、グ、と首に大太刀が食い込んだ。


「…いいえ、その逆にございます」

「殺される覚悟で来たと?」

「ええ。ですが、死にには来ておりません」


頓珍漢な事をいう私に、三日月 宗近様はゆっくりと首を傾げた。

成人男性がやって良いような仕草ではないが、やけに似合っていた。


「絶対に死なないとは思っておりません。ですが、死ぬ気も毛頭ないのでございます」

「…ふむ、ではお前に問おう」

「なんなりと」

「なぜ、審神者になろうとしておる?」


彼の質問の意図が分からず、惚けてしまう。

が、私などにはわからない高尚な考えがあるのだろうと思い、口を開いた。


「審神者になろうと思ったことは、一度もありません。政府に連れ出され、気づいたらこの本丸に投げ入れられていたからです」

「…ほう」

「ですが、私は今…二つの契りを交わしております。それを果たすためには、審神者にならねばならないのかもしれません」


一つは、五虎退様と石切丸様を顕現すること。

もう一つは、乱 藤四郎様と交わした、生きて帰ること。


「そして一つ、納得のいかないことがあるのでございます」

「申してみろ」

「この本丸を解体し、刀剣男士を刀解する事です」

「なに、」

「もし、6人目に充てられた私が斬り捨てられた場合ですが」


刀剣男士様方に、動揺の波紋が広がる。

私に刀を突きつけている蛍丸様もだろう。

ピリ、と痛みが走り、どうやら肌が切れてしまったようだ。


「…だとしても、なぜお前が腑に落ちぬのか。俺等はすでに4人もの人の子に危害を加えておる」


刀解もまた道理だとは思わぬか、と問いかけられる。





「貴方様方は、神様なのです」





私の声が、シンとした空気に響く。

怪訝そうな表情を浮かべた方々がいるが、私は続ける。


「人が羽虫を潰して怒る人はいますか?」

「おらぬ」

「なら、神が人を殺しただけで罰を与えられるなど…可笑しいことだと、思いませんか?」

「…お前は、自分を羽虫と同じ存在だと?」

「神であらせられる、貴方様から見れば」


彼らは、神様なのだから。

全てが赦されて然るべき、神様なのだから。


「…なるほど」


三日月 宗近様は、私をじっと観察した後に言う。


「お前は『神』が、恐いのだなあ」

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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時

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