二十二柱 ページ22
.
「…ふう」
調べたところ、馬はお湯で洗ってはいけないらしく、水で洗わなくてはいけないらしい。
石鹸は人間用のシャンプーでいいらしく、大量の水に少量のシャンプーを溶かして馬に体にかけて洗うのだとか。
流石に6頭分は疲れたな。
でも、皆協力的だったし。
頭を洗おうとして腕が疲れたな、と思えば私の心を呼んだかの様に頭を下げてくれた。
耳に誤って水をかけてしまった時も暴れることはなく、ヒヒン、と鳴いて注意を促すだけ。
馬の後ろに立つと蹴られるとよく言うが、後ろ足の蹄も大人しく洗わせてくれた。
「ありがとうね」
タオルドライと最後の一頭のブラッシングを終えた時には、もう日が完全に落ちていた。
新しい藁を敷いた厩に馬を戻し、彼らの食事である乾草を食事用の箱に再び敷き詰める。
ひと段落ついた、と息を吐いた。
「こんのすけ、離れに戻ろう…こんのすけ?」
小さな白い狐がいないと周りを見渡す。
離れに帰ったのかと思ったが、律儀な彼はそんなことをしないだろうと思い直した。
困った、とため息を吐こうとした時一頭の馬が鳴く。
「どうしたの、何かあった?」
そう声をかければ、もう一度鳴かれる。
何か気に入らないことでもあったのかと厩の中を覗き込んだ。
「…こんのすけ」
中には、藁に包まれくるりと丸くなって寝ている狐の姿があった。
馬はこんのすけの存在を教えてくれていたのだろう。
「ありがとう。こんのすけを貰うね」
藁の中からこんのすけを抱き上げれば馬は、よかったねとでも言うように頭を擦り付けてきた。
お礼として暫く撫で、また明日来ると告げて離れに向かう。
…今日一日、見てるだけだったなぁ。
いつのまにか、障子の隙間から覗く視線は消えていた。
夕方までは気にかけていたのだが、途中で気にする余裕もなくなった。
…いや、あの視線に慣れたと言うべきか。
帰ってお風呂に入ろう。
夕飯は面倒だからいいや。
身体中についた藁を払い、離れに上がる。
こんのすけは押入れにあった毛布の上に寝かせておいた。
湯船に浸かろうかとも思ったが、昨日よりも疲れていると感じたためにシャワーのみで早めに寝ることにした。
恐らくだが、井戸やら庭やらを浄化したせいだろう。
「布団も、一度干さないとか」
ひんやりとした布団に潜り込んだ際に、少し古くさい匂いが香る。
一度目を瞑れば、暗闇に引きずり込まれる様に意識を手放した。
137人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2019年4月10日 21時