切島 鋭児郎@依存型 ページ7
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「…Aっ、」
名前を呼ばれた瞬間に、腕に痛みと締め付けが走る。
振り向けば、顔を真っ白にした鋭児郎がこちらを悲壮な表情で見ていた。
「俺から離れるなよ…!」
「…ごめんね、鋭児郎」
…さっきトイレに行くって言ったはずなんだけどなぁ。
そんな言葉はため息とともに飲み込んでおく。
言ったところで、彼がより一層不安定になることは今までの経験からわかっていた。
それに、今は優先すべき事がある。
「鋭児郎、うで、痛い」
彼の個性は『硬化』。
全身の硬度を自分の意思で操れる個性だ。
しかし、情緒不安定になると個性にまで酷く影響するのだ。
この間包帯取れたばかりだったんだけど。
鋭児郎の手が硬化しており、掴んでいる私の腕を引っ掻く様に傷つけていた。
猫などに引っかかれるよりも深く、滲むだけでなく腕を伝うくらいには出血もしていた。
「あ、あぁあ…っ、Aの、Aの腕、が…!」
まあ、今回はそうでもないや。
瞬時に手を離され、冷静に腕を観察する。
前々回は硬度が酷く高く、クラスの皆が真っ青になって救急車を呼ぶほどだった。
結局、リカバリーガールの元へ元凶である鋭児郎が私を運んで行ったのだけど。
はあ、と一つため息を吐けば、目の前の彼はびくりと身体を震わせる。
「悪い、ごめん、ごめんなさい、ごめん悪いごめんごめんごめん嫌いにならないでごめん…っ!」
瞳の淵にいっぱいに涙を溜めてこちらを窺い見る彼。
友達に、鋭児郎とのこんなやり取りを聞かせてみれば、早く関係を絶った方がいいと勧められた。
これが巷で噂の『ヤンデレ』と言うものに分類されるんだとか。
「っ…俺、うざいよな、面倒だよな、でもおれ、お前がいないと…生きてけねぇんだ…!」
傷に触れない様に、個性が暴走しない様に慎重に私に触れる鋭児郎。
そんな姿が、私の胸のどこかに引っかかるのだ。
「…っごめん、でも…捨てないでくれ…」
涙に濡れる瞳が、ツヤリと光る。
心底怯える様に小刻みに震える彼の身体は冷たい。
頰に触れる指先は、青白かった。
「わかってる。大丈夫だよ、鋭児郎」
私の言葉を聞いた瞬間に、ぼろりと溢れる涙。
ふにゃりと心底安堵した様な笑みを彼が浮かべた時、
…ああ、この笑みが見たかった!
と、心が満たされる。
彼が私を傷つける度に、泣き縋る度に、私の心のどこかが安らぐ。
もう引き返せないところまで来ているのは鋭児郎じゃない…私なんだろう。
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零桜 - B組の鱗くんの無害(依存型)が見てみたいです!できれば中国語も少し入れてくれませんか、、、? (8月3日 13時) (レス) @page22 id: 181796d377 (このIDを非表示/違反報告)
ワァ! - オリジン組の人達の奴(個人の奴も)が見てみたいデス! (2021年4月28日 6時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
闇空 - (笑うところ)ってところで本当にわらったらマイパピーからメッチャ心配されましたwwww (2020年4月1日 19時) (レス) id: b30251e94a (このIDを非表示/違反報告)
黄(コウ)(プロフ) - ねじれさんがあることに感動してしまって涙が出てきました。ねじれさんの作品だとかとっても少ないし、こうして短編集でねじれさんが出てくることがあんまりないきがして…。最高でした! (2019年12月30日 13時) (レス) id: 535205595b (このIDを非表示/違反報告)
BT21 - リクエストでオバホールで調教見てみたいです本当にできたらでいいんでお願いします (2019年5月10日 19時) (レス) id: e3d4fbe2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2018年9月19日 16時