尾白 猿尾 ページ12
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あれ、と思った時にはなにかがズレ始めていた。
仲のいい友達に無視された。
彼氏に急に別れてくれと言われた。
謂れのない事件の犯人になってクラス皆から避けられるようになった。
そして、今日は。
「アンタなんか、ウチの子じゃない…!」
パシン、と音が響いてじんわりと頰に熱を持つ。
私の頰を張った母は涙を流していて、父は険しい表情で私を見ていた。
…なんで?
何にも、してないのに。
そう言おうとして開いた口から、声が出ることはなかった。
カラカラに乾いたように喉が引っ付いて、空気を吐き出すことができなかったのだ。
カーッと頭が熱くなって、ツンと鼻が痛くなる。
視界が歪んだ瞬間に踵を返して、家から飛び出した。
なんでなんでなんでなんで?
私、なにもしてない、なにもしらない…!
ぎゅっと目を瞑って涙を押し込める。
ここで泣いたら、負けた気がするから。
暗く鳴り始めた道をどこへ行くともなく自分のできる限りの速さで駆け抜ける。
だんだんと息が続かなくなって、苦しいと思った時視界に入ったのは小さな寂れた公園。
私は無意識に、一つの影を探していた。
「お、じろくん…っ」
「Aさん!?どうしたんだ、その頰…!」
孤立し始めた私にも優しく接してくれる唯一の人。
隣のクラスの彼、尾白くんはいつでも私に優しく微笑みかけてくれる。
家が近いことが判明してからと言うものの、この公園でよく私たちは話すようになった。
「…っかぞく、にも…嫌われちゃった…!」
寂れたベンチに腰掛けた途端、安堵からジワリと涙がにじむ。
「Aさんは、何もやってないんだよね…?」
尾白くんのその言葉に、頭が真っ白になる。
疑われてる…?
今度こそ独りになるの?
そんなのいやだ…っ。
「何もやってない、信じて、信じて尾白くん、お願いっ」
震える手で彼に縋り付く。
そうすれば、彼はふわりと柔らかく笑って私の頭を撫でた。
「うん、信じてるよ。Aさん“は”何もやってないこと、俺は知ってるから」
じんわりと伝わる熱にホッと息を吐く。
泣いて重くなった瞼も相まって、だんだんと意識が闇に溶け込み始める。
ふわり、ふわりと夢現のなか聞こえた声は、いつもと変わらない優しいものだった。
「こんなに泣いて…可哀想に、
________”Aは“何にもやってないのに本当に…可”愛“想だ」
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零桜 - B組の鱗くんの無害(依存型)が見てみたいです!できれば中国語も少し入れてくれませんか、、、? (8月3日 13時) (レス) @page22 id: 181796d377 (このIDを非表示/違反報告)
ワァ! - オリジン組の人達の奴(個人の奴も)が見てみたいデス! (2021年4月28日 6時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
闇空 - (笑うところ)ってところで本当にわらったらマイパピーからメッチャ心配されましたwwww (2020年4月1日 19時) (レス) id: b30251e94a (このIDを非表示/違反報告)
黄(コウ)(プロフ) - ねじれさんがあることに感動してしまって涙が出てきました。ねじれさんの作品だとかとっても少ないし、こうして短編集でねじれさんが出てくることがあんまりないきがして…。最高でした! (2019年12月30日 13時) (レス) id: 535205595b (このIDを非表示/違反報告)
BT21 - リクエストでオバホールで調教見てみたいです本当にできたらでいいんでお願いします (2019年5月10日 19時) (レス) id: e3d4fbe2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2018年9月19日 16時